10年間、家族の真ん中には
いつもこの大きなテーブルがあった
vol.01 ナラのダイニングテーブル 東京都 目黒邸
10年ぶりに訪れた目黒邸には、子供たちの元気な声があふれていた。前回、訪問時には、まだ生まれていなかった二人が7歳と4歳。団らんのリビングには、結婚を機に揃えられた木の家具が家族を見守るように静かに佇んでいる。歳月とともについたささやかな傷は、笑い皺のようにさえ見えた。「このテーブルには我が家の思い出がいっぱい詰まっているんです」と、いとおしそうにナラの天板を撫でる郁子さん。まだ子供がいないころ、ご夫婦でお正月休みに何日もかけて、この大きなテーブルでジグソーパズルの大作を完成させたこと。生まれたばかりの子供たちのおむつ替えは、いつでもこのテーブルの上だったこと。家族の誕生日には、主役がいつもこのテーブルでケーキのロウソクの火を吹き消すこと。家族の真ん中には、いつもこのナラのダイニングテーブルがあった。それはこれからも変わらないだろう。アームチェア“ヴォーグ”は、最初にナラで2脚を購入。その座り心地の良さを気に入って、あとからウォールナットで2脚追加。家族が増えるように、家具も増えていった。「子どもたちの部屋もあるんですけど、いつもここで遊んでいますね。勉強もごはんもこのテーブル。大きいから作業もしやすいんですよ」と郁子さん。「子どもがいるから、汚れやちょっとしたキズなんかも気にしない」と笑うが、10年経ったとは思えないほど天板はきれいだ。「長男は、家具蔵でウォールナットのデスクを選んだんです。長女にも『私はサクランボの木の机ね』って、チェリーのデスクをねだられています。子どもたちも無垢の木の家具で育っているから、やっぱり好きなんでしょうね」と、嬉しそうに話す浩一郎さん。家具蔵で使用する選りすぐりのナラは、10年前よりもはるかに貴重な木材となった。しかしこのナラのテーブルと生まれたときからずっと一緒にいる子どもたちにとっては、そんなことは関係なく、これから先いつまでも、気兼ねなく遊べる幼なじみのような存在に違いない。
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