同潤会アパートの歴史を継ぐ
マンションに暮らす
vol.11 東京都 N邸
家具蔵では、様々なタイプの無垢材キッチンを製作していますが、このN邸では、ベーシックタイプとセミオーダーを組み合わせて、対面式キッチンの袖壁タイプという要望の多い形を実現しています。
シンクの前はオープンに、IHヒーターの前は壁を立て、レンジフードへの排気を整流させるプランです。
もともとこの場所には同潤会アパートという歴史ある集合住宅がありました。
その建て替えに際し、古くからの住人であったN様は内装を木の温もりに溢れた心安らぐ空間にされたいという思いがありました。
加えて、家具蔵の家具を長年愛用してこられたN様は、家具はもちろん、キッチンも家具蔵に頼みたい、という強いご希望があり、建て替え計画の初期からその想いをマンション販売業者に伝え、新築マンションのキッチンを始めから変更し、いわゆる「施主支給」のような形にするという方法をとりました。
本物を知り、良い物をセンスよく選ばれてきたN様のご希望は明快でした。
床材を無垢材にして、長く使っている家具蔵の家具に合うオープンキッチンは、ツルツルしたシステムキッチンの質感ではなく、やはり本物の木の質感があって欲しいということと、ダイニング側には何でも仕舞える大容量の収納を計画すること。キッチン家電を置く背面収納も、オーダー家具のような雰囲気のあるものにしたい、というような、ごく当たり前の内容であっても、普通のキッチンでは実はなかなか実現が難しい事でもありました。
また、そういった内容以外にも、大手デベロッパーによる新築マンションに当初からオーダーキッチンを導入する事は様々な部署との調整も必要となります。
家具蔵では、専門の設計部がある事からそのようなやりとりにもきめ細かい対応が可能であったことも、このキッチンが実現された大きな要因となっています。
他の住戸の標準仕様に較べ、ビルダーの担当者も驚く変貌となったN様のお住まいは、モダンなオープンキッチンを中心としながら、どこか懐かしい雰囲気を漂わせています。
「ここに友人を呼ぶと皆真っ先にこの無垢材キッチンに驚きます。ここに暮らせること、毎日の作業が今から本当に楽しみです」
というお言葉からは、日本の集合住宅の歴史を語る有名建築の建て替えという、長く手間のかかった事業に住人として携わった苦労よりも、これから始まる新生活に心を躍らせているN様の嬉しそうな様子が伝わってきます。
梁下を利用したオーダー吊棚は、使い勝手の良い引戸にしています。「水屋」のような印象の羽目板の扉は、無垢材の良さを感じられ、懐かしさもありながら普遍的なデザインでもあります。天板下の空間は引出して使えるスライドトレーになっています。
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