日本と西洋の文化の「違い」はどこからくる?
2018.2.27
当コラムでは何回か、建築から見る日本と西洋の文化の比較をご紹介しています。
今回も建築や建具に話を向けながら、日本と西洋文化の違いを探っていきましょう。
建築に見る文化の違いと共通点
ヨーロッパで良く見られるゴシック建築を代表するような大聖堂や大寺院は、壮大ないわゆる「人工美」です。
ここでは日本の建築や庭園で見られるような樹木との取り合わせは考えられていません。
山の上にそびえ建つギリシャのパルテノンでさえも、樹木のない大理石と幾何学でつくられた殿堂で、生物系の素材とは全く無縁の存在といっていいでしょう。
一方、日本では伊勢も日光も、神の宮居=神宮は樹木あってこその神域で、緑の参道を通って神様に近づくようにつくられています。
参道の形はさまざまですが、出羽三山の羽黒山もその代表的なものの一つ。
頂上にある三社合祭殿にたどりつくまでには、二千数百段に及ぶ急峻な石段を登らなければなりません。
その両側には数百年を超えるスギの大木が天を覆って立ち並び、昼も暗く、頭上の梢の間からわずかに日の光が漏れてきます。
参道を通るあいだに、身も心も清められて神々しい気持ちになっていきます。
この参道、建築に対するアプローチは異なっても、ゴシック建築の大寺院や大聖堂の内部と似ている部分を発見できます。
ゴシック建築の寺院のなかに入ると、両側には太い石の柱が立ち並び、天井はアーチ形の凹みが連なってほの暗く、頭上のステンドグラスの窓を通して薄い光が漏れてきます。
なんともいえない厳粛な気持ちになりますが、それはスギ並木の細くて長い参道の空間とそっくりです。
「人間が神に近づいていく」という通路をつくるに当たって、一方は生きた木でその空間を構成し、一方は石の柱でそれを造り出しています。
発想のうえではどちらも同じ考え方から出発していますが、使う素材の違いによって、日本は木の文化を育て、ヨーロッパは石の文化を築きあげてきたのです。
木の文化=軽量文化、石・金属の文化=重量文化 と言い換えることも出来ます。
建具の違いにも文化の理由がある
日本の歴史ある建物の中で一番「重い」感じがするのはお城です。
ヨーロッパの古城はさらに重厚なイメージです。
落城の炎で跡形もなく焼け落ちてしまう日本の城とは対照的といえます。
日本が「軽量文化」に至った理由はいわゆる資源不足が原因であるというのが通説ですが、このテーマの主題でもあるあくまでどちらを良しとするか、という文化の違いととらえることもできます。
いわゆる日本人が軽量文化であることを定義とすると、やはり傑作はふすまと障子でしょう。
いずれも小指1本で動かせるほどの軽さで、おそらく世界で最も軽い建具です。
屏風もまた紙でつくった傑作の一つです。
たためば一人でどこへでも持ち運びのできる重さです。
それを小形にして隙間風を防ぐ枕屏風ができ、さらに縮まって茶道に使う風炉先屏風ができましたが、これもまた 軽量文化の代表といえます。
日本の住宅と欧米の住宅、その大きな違いは自然観や気候による建物のつくりにあります。
日本は
■比較的温暖な気候。夏の暑さを避ける工夫が施された簡素なつくり。柱と梁(はり)の軸組で構成。
■開けておくと存在が消える「引戸」によって、家中に風が通る。
■インテリア、エクステリアという概念はなく、室内と室外は一体化してひとつの家となっている。
■土間、縁側のような曖昧な空間によって、家は自然と一体化するようになっていた。
という特徴があり、
対して西洋は
■冬の寒さが厳しいため、堅牢な厚い壁、小さな窓、室内には暖炉を配し熱を外に逃がさないようなつくり。
■家は外界(自然)から身を守るシェルター。「ドア」は閉めている状態が基本。
■室内は室外に対するもの、として隔離されている。
という特徴があることは以前のコラムでもご紹介しました。
つまり、日本では自然と一体化しながら住まい空間をつくるなかで「建具」も自然や季節を感じながら快適に過ごす為の「身近な実用品」であり、西洋の住まいの概念は様式美と室内装飾の伝統に裏付けされた、自然から隔離された室内を美しく快適にするためのものであったことがわかります。
体ごと押しつけないと開かないようなヨーロッパの重いドアと日本の仕切り具などは全く異質なものであり、どちらが良い悪いではなく、風土とそれに対する考え方の違いとは切り離さずに考えていくべきでしょう。
材料の違いといえば、もっと身近に食事の例があります。
ヨーロッパでは金属のナイフとフォークで料理を食べますが、日本では木でつくった箸を使った食事が主流です。
同じものを食べるのにも「金(金属)」と「木」の対比があります。
食べてきたものの違いということもありますし、素材やモノに対する考え方の違いとも言えます。
その違いこそが文化であり、やはり日本は木の国・緑の国なのだとしみじみと感じます。
関連リンク
https://www.kagura.co.jp/case/
https://www.kagura.co.jp/voice-cat/collabo/
参考文献
鹿島出版会 小原二郎著書「木の文化」
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