高齢の方のキッチン選びのポイントは
2024.7.24
高齢な方ほど安全性と使いやすさを重視する
人は誰でも年をとります。
高齢化社会と言われて久しい現代ですが、どれだけ年齢を重ねても食事は摂らないといけません。
逆に食事を楽しむことが長く健康でいることの重要な要素でもあります。
自宅において、その「食」を司る場所は言うまでもなくキッチンです。
高齢ともなると暮らしのスタイルや自身の状況によっての違いはありますが、1日の中でも滞在する時間が長い場所ともなります。
火や刃物の使用など少なからず危険を伴う場所であり、その点には若い時よりも注意が必要になります。
また、段差に躓くことなども気を付けないといけません。
高いところにあるものを取りにくくなることもあるでしょう。
高齢になればなるほど「安全性」と「使いやすさ」に配慮したものが必要になるのはキッチンも同じです。
そう簡単に仕様や形状を変えることはできないキッチンですが、もし新築やリフォームなどの機会があれば自身の身体の事情などを鑑みた「使いやすいもの「安全性の高いもの」にこだわって検討してみるのも良いでしょう。
建築における工夫を考える
建築段階からキッチン作りに携わることができるなら、まずは「キッチンスペースと他の部屋の段差を無くす」ことをお勧めします。
段差があると躓きやすい、というのは年齢に関係なく共通する認識です。
年かさを増すほど認知能力が低下する可能性は高く、その危険性も高まります。
キッチンは設備配管が床下に通ることもあって、特にリフォームでキッチンを移設する場合には排水勾配の関係上、隣接する部屋や廊下などとの段差が生じてしまうこともあります。
そういった場合には、他の部屋の床も上げてフラットにするなど極力床面に段差を設けないことが大切です。
そして「キッチンスペースにも床暖房を装備させる」こともお勧めです。
キッチンは冷暖房が届きづらい空間になることもあります。
リビングダイニングに床暖房を入れる際にはキッチンまで導入すれば、冬場の冷えにまつわる身体的なトラブルを回避しやすくできます。
床材の選び方も重要です。
この場合、硬さや滑りにくさを重視した方が良いでしょう。
タイルは清掃性に優れていて見た目も美しいですが、硬さが疲労の原因となり、濡れているときには滑りやすくなってしまいます。
フローリングやコルクタイルにするなど素材の選び方も考慮しましょう。
キッチンマットを置く方法もありますが、マットとの僅かな段差でも躓くこともあるため、あまりお勧めはできません。
そして明るさも軽視してはいけません。
ものを視る力や視神経の耐性も衰えているのであればできるだけ自然光を取り入れることができるのが望ましいところです。
自然光が入るように窓を設けることができればベストです。
キッチンや背面収納のカウンター上などの作業をする面はスポットライトや手元灯などで照らすことで、老眼や白内障など将来的にものが見えづらくなった時でも手元を安全に見えるようにする工夫が必要です。
更には床材のカラーも明るい色を選ぶことで、スペースとしてはあまり広くないキッチンでも明るくすることができます。
キッチン本体の工夫はどうするか
まずは何と言っても「高さを抑える」ことが重要です。
キッチン上の吊戸棚や背面収納の上部に収納してあるものを取り出すには、どうしても脚立や踏み台を使うことになります。
足を踏み外す、あるいは転落する危険性があるため、極力収納は手の届く範囲に抑えることが大切です。
単純に腕が上がらないといった身体的な事情に対応することも可能になります。
天井近く=空間上部に収納を設けたいという場合は、昇降式のキャビネットなどを入れ、台に上らずとももの出し入れができるようにするのも一案です。
「移動距離を少なくする」ような設計とレイアウトも一考しましょう。
ワークトライアングルと呼ばれる、冷蔵庫・シンク・クックトップの配置バランスを考慮します。
また、それらを結ぶ3点の距離は3.5メートル~6メートルと言われますが、その距離を短くすることによってさらに楽に作業ができるようになります。
そのうえで収納の仕様は「引き出し」「引き戸」を多用すると使い勝手がよいでしょう。
今のキッチンは基本的に引出し式の収納が多いのですが、これは屈まずに上から収納物が見渡せるので使い勝手に優れています。
キッチンだけでなく背面収納についても腰より下の高さのキャビネットは引出タイプだと使い勝手がよく、それよりも上の部分の場合は、扉よりも引き戸の方がより安全性が高くなります。
扉の場合、開けて中のものを取り出す際に両手が塞がってしまうと、一度ものを置いて振り返った時に頭や顔をぶつけてしまう可能性があるためです。
最後に「座って作業できるスペース」が確保できているとベターです。
ずっと立ったままの作業は脚が疲れてちょっと座りたくなるものです。
年齢を重ねるとそれはより顕著になってきます。
キッチン内にハイスツールを置くのも良いですが、歳を重ねたときにはもう少し安定したチェアがお勧めです。
更にスペースがあれば、下ごしらえや盛り付けなど座って作業ができるため調理が楽になります。
キッチン自体に座って作業できるスペースを設けると収納が少なくなってしまうため、場合によってはダイニングをキッチンと繋げてダイニングテーブルの上を作業スペースにするのも一つの方法です。
機器も使いやすさや安全性を重視する
水や火などは一歩間違うと大変な事故や損害に繋がるため、ここにも安全性や使いやすさにこだわっていきたいところです。
水栓のレバーはシングルレバーで吐水・止水が軽い力でできるもの、もしくはタッチレスやフットスイッチなど手がふさがっている時でも操作できるものに。
クックトップは安全性を第一に考えればIHヒーター一択です。
表面もガラスなど掃除がしやすいのも良いところで火力も決してガスに見劣りしません。
そして、キッチンは予算を抑えたいという場合でも、レンジフードだけはお手入れがし易い少しハイグレードなものをお勧めします。
どうしても設置場所が目線より上になるので普段のお手入れも大変になるので、少しでも簡単にお掃除できてその頻度も少なくて済む、オイルスマッシャー搭載のタイプや自動洗浄機能がついているものなどが良いでしょう。
最後に食洗機。
高齢の夫婦の場合、二人しかいないからと食洗機は不要という考えもありますが、体調が優れない時や家族が遊びに来て一時的に洗い物が増えた時になどにはやはりあると便利です。
機種にもよりますが、使い慣れるまで不安という考えがある場合は早めに使い始めることをお勧めします。
インテリアとしての立ち位置も強くなってきたキッチンですが、やはり「設備」「道具」の側面は色濃くあり、その周辺も含め使い勝手や安全性については決して軽視はできません。
今回は「高齢の人」に向けた内容でしたがこの世代の人が使いやすいということはより若い層も使いやすいということです。
これからのキッチン選びの参考になれば幸いです。
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