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針葉樹文化と広葉樹文化の違い

2022.4.16

 

 

樹木は大きく分けて、「針葉樹」と「広葉樹」とに分けることができます。

先がとがった細い葉の針葉樹と、平たいかたちをしている葉の広葉樹。

今回は知っているようで知らない、この2つの違いを掘り下げてみましょう。

 

 

針葉樹と広葉樹の違い


 

 

針葉樹と広葉樹は、ご存知の方も多いように葉の形から見分けられます。

木の幹も、針葉樹はまっすぐ伸びているものが多いのに対し、広葉樹は太くて曲がっていることが多く、さらに枝分かれしているのが特徴です。 

また、英語で針葉樹をソフトウッド、広葉樹をハードウッドと言うように、針葉樹は軽くて柔らかく、広葉樹は重くて硬いといわれています。

これは木が含んでいる空気の量に関係しています。

木を構成する細胞と細胞の間には、無数の孔=空気の隙間が空いていて、この細胞と空気の隙間の割合を空隙率(クウゲキリツ)といいます。

大半の広葉樹は空隙率が低いため気乾比重が大きく、木は重くなります。

逆に針葉樹は空隙率が高くなり、比重も小さく、木は軽くなります。

硬さの違いに関しては、空隙率の低い広葉樹は細胞の密度が高いために硬くなり、針葉樹は密度が低いために柔らかくなるというわけです。 

針葉樹の樹種は540種と言われているのに対して、広葉樹は20万種と格段に多く、さらに構造も複雑なことから、性質もバラエティーに富んでいます。

この区分は立木を植物学的な立場からみたときの分類ですが、一方、木を工芸的に取り扱う実際の立場からみても、同じような区分が当てはまります。

 

針葉樹と広葉樹にみる「文化」の違い


 

 

このことは木を造形的に使うとき特に留意しておきたいことです。

例えば、私たちが現代の建物の内装の仕上げや、家具を作るとき使うのは広葉樹で、針葉樹はほとんど使いません。

一方、和風の伝統的な建物を作るときの事情は全く逆で、多くの場合で針葉樹が使われ、広葉樹が使われるのは、むしろ例外に属します。

いいかえれば、西洋におけるインテリアの構成は、広葉樹を基盤として成り立っており、日本におけるそれは、針葉樹を主材として成り立ってきた、ということです。

このように針葉樹と広葉樹とが、その使われ方に東と西ほどの相違が生まれたのは、二つの材の細胞の構成が違うためです。

針葉樹は仮道管が九十パーセント以上を占めているため、木肌は精細でキメがこまかい、また柔らかな絹糸光沢をもち、白木のままでも美しく、絵絹のようなうるおいがあります。

一方、広葉樹のほうは、針葉樹よりも植物的に進化しているため、組織が複雑で、木目は変化に富み、材質は堅硬ですが、材面は粗く、塗装の過程を経て、がぜん綺麗になります。

つまり木肌で比べると、あたかも針葉樹は絵絹であるのに対して、広葉樹は洋画のカンバスのような味わいの違いをもっているのです。

 

加工に使う刃物も、針葉樹と広葉樹とでは違う


 

 

このように考えてくると、広葉樹の材が、西洋の金属や石材にかこまれたインテリアの中で主役をつとめ、針葉樹の材が、木と紙とタタミの住まいの中で主材になったのは、きわめて自然の成り行きであったことが分かります。

ところで加工に使う刃物も、針葉樹と広葉樹とでは違います。

軟材の針葉樹は切削角度が小さいほうがよいのですが、硬材の広葉樹では角度を大きくしないときれいに削れません。だから軟材の刃物は、硬材の工作には使いにくいのです。

いわゆる指物師といわれる人たちが、簡単に洋家具を作れないのは、硬材の刃物になじみにくいためです。

違った材料を使い、工具を異にすれば、生み出される作品が変わってくるのは当然のことです。

造形材料としての木の使い方に、針葉樹の白木を基調にした日本的な流れと、塗装を経て味が出てくる広葉樹の西洋的な流れとが生まれて、明らかな対比をみせるようになったのは、材質の違いを考えれば、ごく自然のことのように思われます。

 

住文化の違いが使用する樹種の違いを生んだ


 

 

針葉樹と広葉樹との違いはまた、つぎのようにたとえることができそうです。

ひと口に肉といっても、海と陸に住むものとではずいぶん違います。

組成も栄養も違うので、調理法も味付けもおのずから変わってきます。

その違いを木についていえば、針葉樹は魚肉にあたり、広葉樹は獣肉に相当するといえるでしょう。

獣肉の料理がわが国に紹介されたのは明治のはじめです。

いまでは一般的なステーキなども、当時は変わった食べ物としての認識でした。

広葉樹の木肌がわれわれの生活の中に入ってきたのは、やはり同じタイミングです。

それまで日本人は、針葉樹の白木の肌にしか親しんでおらず、例えばニスが分厚く塗られたナラの木肌には、牛肉の脂っこさのような戸惑いを感じました。

ですが一方では、それを新しいもの、文明開化のシンボルとしても受け取ったのは以前のコラムでもご紹介したとおりです。

針葉樹の白木の肌はタタミや障子といった植物材料がそれを取り囲むことで慣れ親しんだ調和が出ます。

広葉樹の家具は和室とも合うのは勿論ですが、石や煉瓦、鉄といった硬質的・洋風的なものともまた相性が良いのです。 

 

適材適所、という言葉があるようにそれぞれには相性があります。

その相性を見極めて建築やインテリアを構成することが何よりも重要、ということです。

 

参考文献

鹿島出版会 小原二郎著書「木の文化」

 

 

家具蔵で扱う樹種の一覧はこちらから

 

 

 

 

 


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