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木の家具と暮らす ~私たちのKAGURA STYLE~ #06

2022.4.19

 

 

建築家 × KAGURA コラボレーション実例 【その3】


 

 

建築家の作る空間。

それは閃きやセンスだけではなく、膨大に積み重ねられた個人的な体験や、ノウハウに裏付けられた手作りの作業によって生まれるものづくりに他なりません。

ここでは、それと同様に「丁寧な手作業による上質なものづくり」を標榜し、行っている私ども家具蔵の仕事が建築家の感性や手掛けた空間と響き合い、見事に形となった個性豊かなインテリア実例をご紹介します。

 

松本直子建築設計事務所


 

 

松本直子さんは日本女子大学住居学科卒業後、川口通正建築研究所を経て独立。

1997年に松本直子建築設計事務所を設立しました。

建築家が自主運営するNPO法人「家づくりの会」に設計会員として所属しています。

 

「木」を熟知した家づくりを 


 

 

自然豊かな景観に合わせた杉の床が優しい雰囲気を作り出し、クルミ材の風合いがやさしい「テーブル ヴィンテージ」、タモ材の柾目がスッキリとした印象の「チェアゼン」「ベンチ ゼン」を合わせて、異なった樹種のアンサンブルが空間に奥深い味わいと変化を与えています。

テーブルの左手にある腰壁の向こうは、一段下がったソファコーナーとなっています。

空間の広がりはそのままに、性格の違う居場所をゆるやかに繋げる手法です。

 

「ものづくりの根本」が木材ができるまでには詰まっている


 

―松本さんは木の仕入れからご自分でされることもあるそうですね。どのようなきっかけだったのですか?

ある施主さんのご要望で4mほどのミズメザクラを探していた時、先輩の建築家に教えられた地方の材木屋さんに行ったことが最初でした。

そこには広葉樹・針葉樹を問わずあらゆる木材があって、木目の種類や色の違いも実にさまざま。樹齢百年を超える木材も並んでいて、「百年も経つとこんな杢目になるんだ!」というのも初めて目の当たりにしました。

建築家は実際に建築で使う「製品」は知っていても、その原材料のことなんて意外と知らないものですよね。

木材の天然乾燥の場合、1寸(約3センチ)の厚みがある木を乾かすのに1年、6センチなら2年も掛かります。

床材ひとつとっても、山から伐り出されて一枚一枚挽いて…。

そのような過程に、ものづくりの根本を学びました。

また、それぞれの木の個性や特徴を知って初めて、単に「商品を選ぶ」のではなく、「この家に必要な木材」を自由に選ぶことができます。

同じ木村でも、建築に使うのと家具に使うものでは違ってきますからね。

ひと口に木と言っても、いろいろな役割がある。

そういうことを知れば知るほど、建築家として木について知ることの大切さを改めて実感しています。

 

飽きずに愛せる家や家具は、それを叶える設計やデザインがあってこそ


 

―松本さんの設計は、自然を多くとり入れながら、とても洗線されたデザインに昇華されているのが印象的です。

ご自身ではどう考えられていますか?

自然の木を伐ってきて、それをそのまま使っても、人間の生活には相容れません。

華道でも、「花はそこに咲いていれば美しいけれど、切った瞬間、その美しさは人の手に委ねられる」などと言われますが、それこそが我々建築家の役目だと思っています。

特に家は長く暮らしていくものですから、時間が経つほど馴染んでいくデザインやスタイルを見つけていくことがとても大切です。

家具も同じ。

ですから施主さんには、安心して任せられる家具店しかご紹介したくないものですよね。

いつまでも飽きずに愛せる家や家具は、それを叶える設計やデザインがあってこそだと思っています。

 

その家、その土地にあった木材をとり入れながら、それぞれの部位にあった材を選んでデザインしていくという松本さん。

取材時には、いろいろな木で作られた特製の皿や盆も見せていただきました。

施主に樹種の説明をする際にも好評で、手にとって見比べられるので話も盛り上がるといいます。

そのような実感をともなう家づくりはきっと施主も自身が参加をした楽しい思い出となって、完成した住まいへの愛着もさらに増すのかも知れません。

 

「ソファ モデルノ」の背景にはリビングスペースを仕切る腰壁を設け、落ち着く場所になるように細やかな設計がされています。さらにその向こう側にあるダイニングテーブルはうまく目線から隠し、心地よい空間の一体感が生まれています。

 

大自然の恵みを満喫する家 (M邸/山梨県)


 

 

雄大な富士山のふもとに佇むM邸。

木枠の窓がその美しい田園風景を絵画のごとく切り取り、裸足で歩きたくなる無垢材の床や質感のある漆喰の壁を、やわらかな自然光が照らし出しています。

「私は比較的、都心の家には広葉樹を使うことが多いのですが、このような土地では針葉樹を使うことが多くなります。周りに自然の豊かな環境がある場所では、個性が強い広葉樹よりもその環境に馴染む、やわらかくて自然味のある木のほうがしっくりくるものですよね」

そう語る松本さんは、この家の床材に針葉樹の杉を選んだ。

「杉は針葉樹の中でも木目がはっきりしているので、逆にクルミやタモの柾目を使った家具とも相性が良い」

とのこと。

「空間づくりの中で家具選びはとても重要」

と語る松本さんは、施主に紹介する家具店も厳選する。素材からこだわり、生活に馴染む家づくりを実践する中で、この家にも自ずとこだわりの家具が選ばれました。

また、全体はオープンにゆったりした広さがありながら、家の中でも少し気持ちを切り替えてくれるスキップフロアや腰高の間仕切り、一部だけ壁を配して籠れる雰囲気を作った一角など、居る場所によって家族それぞれがオン・オフを切り替えて寛げる工夫がされています。

トップライトからの光が足取りを軽くする階段では、無意識に空を見上げる効果もあります。

「暗がりを好まないことと、大学時代、体育会系だったので顔が下を向く生活は嫌なのです」

と笑う松本さんらしい計らいも、この家の心地良さを形づくっているようです。

 

 

自然光が美しいグラデーションを作る漆喰の壁と所々に配された木のやさしい風合い、細やかなデザインが絶妙な配分となったM邸。

広い空間をさらに開放的にする吹き抜けを採用しながら、スキップフロアなどのアクセントで生活の場にも軽やかなメリハリをつけています。

 

 

 

 


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