ダイニングテーブルの高さは何を基準に決めるべきか
2019.5.13
ダイニングテーブルの高さを決める基準となるものの一つが、使う人の体型でしょう。
国内で生産され流通しているダイニングテーブルは天板の高さが床か「700~720ミリ」、ダイニングチェアの座面は「410~420ミリ」で設計されています。
これらの数値は、平均的な日本人(成人)の身長に合わせたものです。
男女の違いも含め、身長はそれぞれ違いがあり、皆がこのテーブルの高さとチェアの座面高が使い易いかは個人差があります。
もし食事や作業の際に「どこか使いにくい」と感じるのであればテーブルとチェアのどちらか、あるいは両方の高さが自分と(もしくは他の人も含め全体的に)合っていないのです。
差尺という考え方
例えば海外旅行に出かけたとき、内装や照明などの雰囲気はとても良く、接客も丁寧で料理も美味しいのに、どこか居心地の悪さ、食事のしにくさを感じてゆっくりできなかった、という経験がある人もいるでしょう。
これは、テーブルとチェアの高さが、その国の人々に合わせて作られているためです。
日々の食事を心地よい環境で楽しむためには、自分のサイズに合わせたダイニングテーブルとダイニングチェアでなければいけません。
そのために知っておきたい目安が「差尺」です。
差尺とは「テーブルの天板面の高さからチェアの座面までの高さを引いた」数字のことをいいます。
この差尺が大きいと、テーブルに対して腕や肩が持ち上がる感じになってしまったり、反対に極端に肩が落ちて背中が丸まり、姿勢が悪くなったりします。
前者はテーブルに対してチェアの座面高が低すぎる場合。
後者はテーブルに対してチェアの座面高が高すぎる場合に発生します。
このことで食事の際に食べ物をこぼしやすくなったり、作業の際に異様に疲れてしまうようになるのです。
差尺が適切な範囲にあることが、使いやすく快適なダイニングテーブルとダイニングチェアの条件のひとつです。
差尺の割り出し方
一般的な解釈として、この差尺の理想的な間隔は「280~300ミリ程度」と言われています。
もしも座面の高さが420ミリのダイニングチェアに座るとすれば、ダイニングテーブルの高さは「700~720ミリ」が基準点です。
よくダイニングセットを選ぶ際にテーブルから決めるのを目にします。
空間の顔にもなる家具であり、大きな面積を占めるものですので、それはそれで間違いはありません。
しかし、チェアから先に決めておくと、その座面の高さからテーブルの高さを決めることができるので間違いの無い高さでテーブルをチョイスすることができます。
もちろん家族の間でも身長はそれぞれ違うものです。
そんな時は家族のなかで一番小柄な人(成人)を基準にするとよいでしょう。
先程お話ししたように、使い易いテーブルの高さは差尺によって決まります。
それは身長の高低を問わず、普遍的なものです。
一方でチェアを選ぶ際には「脚が床にきちんと付く」高さを選択することが疲れにくい着座となるポイントです。
(その際、靴を脱いで試座することは絶対のポイントです)
小柄な人が大柄な人の座面高に合わせて脚を床に付けるのはよっぽど浅く座るか、そもそも不可能です。
ですが、その逆の場合はある程度の調整が利きます。
そのうえで差尺は全ての人に共通するものであるのなら、小柄な人に合わせたチェアの高さに全員が合わせ、その座面高に沿ったテーブルの高さとする。
これが人によってチェアの高さがばらばらになるようでは誰かが居心地の悪い思いをしてしまいます。
それを避け、皆が居心地の良いダイニングを作るのは小柄な人に合わせるのが鉄則です。
ライフスタイルで考える高さ
ダイニングテーブルの高さを決めるとき、もう一つの基準になるのがテーブルを使う人のライフスタイルです。
ライフスタイルを考慮に入れず高さを決めてしまうと、きちんと差尺を計算したのに、なぜか食事のたびに違和感が生じている、置いてみたら部屋の雰囲気に合わなかった、ということも起こります。
まず気をつけたいポイントは、日々の食事に洋食と和食のどちらが多いかということです。
洋食は平皿に盛られることが多いので、洋食中心であればダイニングテーブルの天板はやや高めのほうが使いやすくなります。
一方、和食の場合は丼や土鍋など、使われる食器には高さのあるものが多いため、和食中心の家庭なら、低めの天板のほうが使い勝手がいいのです。
ダイニングのデザインや空間の演出方法も、ダイニングテーブルの高さを決める大きな要素になります。
ダイニングの天井が高い、あるいは吹き抜けになっている、もしくは洋風のリビングと一体化されていて面積が広めであれば、ダイニングテーブルは高めのほうがスタイリッシュに見えます。
ホテルのレストランなど、大きな空間を持つ場所には、この目的から高さのあるテーブルが置かれています。
たくさんの花を挿した大きな花瓶を置いたり、背の高いキャンドルを飾ったりしたときにも映えるため、場を華やかに演出できるのも利点です。
このように、高さのあるダイニングテーブルは、飾り付けに凝りたい、よくパーティを開催する、自宅で教室を開く予定があるという人に向いています。
反対に、標準的な天井の高さで落ち着きがあるダイニング、またはリビングに和室が設けられているという場合は、ダイニングテーブルも低めのほうが馴染むでしょう。
居心地の良さを重視した高級な喫茶店などでは、650ミリ前後の低めのテーブルが多く用いられています。
そして、ダイニングテーブルは家具の中でも存在感があるため、低めのものにすると視線が自然に低い位置で流れ、空間をすっきりとまとめ、実際よりも広く感じさせることができるのです。
しかし、これもさきの「差尺」、つまりテーブルとチェアの高さのバランスの前ではあくまで2次的な要素となります。
まずは使い勝手の良い高さのバランスを重視することが居心地よく、長く過ごすことのできるダイニングをつくるのです。
たかがテーブルの高さ、と思ってはいけません。
これ一つをとっても使い勝手と毎日の暮らしのクオリティを左右する大事な要素です。
そして、自分にはどんな高さの椅子が合い、それに合うテーブルの高さはどんなものなのか。
そして、欲しいと思ったチェアやテーブルはそれで実現できるのか。
そこまできっちり見てくれる家具店で家具を購入することが、快適な暮らしを演出する第一歩になるかもしれません。
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