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一本の木が無垢材家具になるまで

2023.12.11

 

 

無垢材は言うまでもなく、木から生まれたものです。

無垢材を使用して製作した家具は「無垢材家具」と呼ばれますが、家具になる前の過程は意外と知らなかったりします。

今回は「一本の木が無垢材家具になるまで」を追っていきましょう。

 

木の生長と林業の関わり


 

 

天然林では、芽が出たものがすべて木として育つことはなく、それはあくまで一定の割合に過ぎません。

例えば、同時期に百本の芽が出たとしても、生長段階に応じてその数は減り、最終的に残るのは5本から10本と言われています。

天然林で、木が大きく育つことは想像以上に大変なことです。

発芽から10年ほど経過する頃から植物たちの「生存競争」は始まります。

この期間に何かの影響で生長が遅れると、周りの他の木の樹冠の下で育つことを余儀なくされます。

それは十分な陽光が受けられなくなる=光合成を行うことができないことにつながり、十分に大きくなることができない、あるいは成長を止めてしまうような事態にも繋がります。

陽光が少なくてもゆっくりとしぶとく生長することができる樹種もありますが、太陽の光をより多く獲得できるかどうかは種の保存と繁栄にも直結し、そこに苛烈な「競争」が生まれるのです。

ここで人の手が入ることもあります。

下刈りや枝打ち、間伐などが林業に携わる人たちによって行われることで、百年単位で木を育てていき、良質な木材を私たちに提供してくれています。

そこには、林業に携わる人々の知識と経験と努力が必要不可欠です。

 

伐採の季節


 

 

木材として利用する樹木の伐採は、いつでもよい、というわけではありません。

日本や北米では、秋から冬の終わり頃までが伐採の良時期です。

この時期は、木が生長することを一度休止します。

地中から水分を吸い上げる量が減っているので、伐採に向いているのです。

その他の季節に伐採すると木は水分や養分をたくさん吸い上げていいて、その水分や養分が木材となる工程や商品になった後で、品質に良くない影響を与えることがあるので避けています。

また、日本では木材として利用するための木には、伐採に適した季節になっても、古くから木を切ってはいけない日があると言い伝えられています。

各地の森林組合の立木伐採カレンダーには、暦の「大つち」、「小つち」にあたる日にちが分かるように掲載されています。

それぞれ、7日間あるその時期に木を伐採すると、虫が入るなどで保存がうまくいかないとされ、この期間を避けるようにしているのです。

家具作りに使われる木は、伐採する時から長く使うことができるように先人たちの知恵が活かされているのです。

 

手に汗握る製材作業


 

 

山林から伐り出された原木は、しばらくの後に製材されることになります。

製材とは、原木を鋸挽きして建築や家具に使う角材や板材に加工することで、まさに原木が家具材料に生まれ変わる作業です。

製材の現場は、手に汗握るような最大の緊張の時間とも言われています。

家具ができあがるまでの全工程の中ではまだ前半とも言える工程である製材。

なぜそれほどまでに重要かというと、それは家具材の「木目」がこの製材によって決まるからです。

製材は、ただ単に均等に鋸挽きすれば良いという単純な工程ではありません。

木目は重要なデザインの一部になりえるからこそ、原木のどの位置にどの角度で鋸を入れれば、このような木目が表現できるだろうと検討を重ねていきます。

それは平面な板材としてだけにとどまらず、椅子の背もたれや座面など立体的に加工された際に出る木目にも及びます。

家具蔵では、一番の目利きである「木を知り尽くした」者が、一本一本の原木についてその素性を見極めながら指示を行い、製材を進めています。

 

徹底した管理の木材の乾燥


 

 

樹木は、根から水分や養分を吸い上げて、幹や枝葉に循環させています。

伐採したばかりの原木は、繊維や細胞の内部にまで水分が豊富に含まれている状態です。

樹種や樹齢によっても異なりますが、この時点では木材自体の1~2倍の水分を含んでいます。

製材後の乾燥前の木材は、「生材(なまざい)」と呼ばれる状態です。

キノコや野菜、魚や肉などでも保存用に乾燥させると生の状態より小さく縮みます。

この現象と同じことが木材でも起こるのです。

木材も野菜や魚ほど目に見えて縮むことはありませんが、乾燥の過程で収縮などの現象は起こっています。

そのため、生材のまま住宅の建材や家具に使った際に、乾燥が進むと家や商品に良くない影響が出る可能性が高くなってしまいます。

そのようなことにならないために必要なのが、「乾燥」なのです。

家具蔵では、製材後に板と板の間に桟棒という風通しを良くするための棒を挟み原木ごとに積み重ね保管します。

そして、最低でも約1年をかけて含水率が12%から13%になるまで、ゆっくりと天然乾燥を施します。

さらに、現代の気密性の高い住空間で、季節による温湿度の違いやエアコンや床暖房による室内環境の変化にも耐えうることを考慮して、含水率が約6%~7%になるまで人工(機械)乾燥を施し養生させるのです。

乾燥期間も一律一年と区切るのではなく、樹種や木の太さによって異なり、10年を超える乾燥期間を必要とするものもあるほどです。

木材の乾燥は、経験と知識と徹底した管理体制がなければ、成り立たない工程です。

 

そして家具になる


 

 

このようにして、乾燥を終えた木材のみが、職人の手によって様々な家具に生まれ変わることになります。

家具蔵では木目の流れを活かしながら各パーツを木取りし、それぞれのパーツは絶妙で滑らかなラインへと削り込んでいきます。

曲木では実現できない個性豊か年輪の表情が美しく現れ、彫刻のような複雑な造形を可能にします。

木目もデザイン、と考えるが故の製法です。

そして日本が誇る伝統の「木は木で締める」木造建築技術を応用した木組みにより接合していきます。

安易に釘などの金物に頼らないことが強度を確保し、何世代にも渡って使い込むことのできる丈夫さに繋がるのです。

そうして生まれた家具たちはすべて「無着色」で仕上げられます。

いわゆる「着色もの」は傷がつくと下地が露出し、その風合いを損ないます。

木目の美しさを活かし、傷も目立たなくすることでインテリアとしても道具としても長く愛してもらうことのできる無垢材家具となるのです。

 

 

一本の木が、地中から芽を出してから、気の遠くなるような永い年月を経て、ようやく家具ができあがります。

家具となってから先も、樹木として生きてきたのと同じ年月を家具として生きていられるように。

私ども家具蔵はそのような家具製作を今日も行っています。

 

家具蔵の無垢材家具製作の詳細はこちらから

 

 

 


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