「節」の違いを知ることで増す木の魅力とは
2023.7.18
「枝葉末節」
四字熟語のなかに「主要でないこと」の例えである「枝葉末節(しようまっせつ)」というものがあります。
「幹」に対して、「枝葉」は主要でない部分である、つまり物事の中での細部や些細なことの例えです。
さらに「末節」とは、要は「節」のことで枝の先にある節なども物事の本質から外れた、こまごまとした重要でない事柄の例えといわれています。
木材を語るうえで「節」は、ひと昔前までは明確に「欠点」とされ、できるだけ節の無い部分を使用するという傾向がありました。
一方で特に最近は「節有りの木材や一枚板の方が自然材の魅力をより感じることができる」と考えられるようになってきています。
一言で「節」といっても多様なものがあり、その見分け方が一枚板の選定や長く使用できる家具の選別にも役立つのです。
木材に節があるのは当然のこととして捉える
節の全く存在しない木材は昔から高い人気と評価がありますが、木材に節が存在するのは、ある意味で当然のことです。
節とは、とどのつまり原木から板や柱を切り出したときに現れる枝の断面の痕です。
枝が生えていない樹木は無いので、節が入るのは当然なのです。
木材はもともと樹木として自然の中で長い年月を生きていたものであり、そこにはやはり種を存続させるための生存競争が存在します。
そのための光合成を効果的に行うためにあらゆる方向に枝を伸ばし、葉を茂らせ、十分な日照を確保しようとします。
節の種類にもよりますが、その存在は木材にとってごく自然な特徴といえます。
使用する場所、箇所によってはその節痕が少々目立って見えることもありますが、自然材ならではの表情ととらえ、愛でることで一枚板選びや木材選びの幅も広がってくるのです。
生節ができるメカニズム
木の枝は最初の頃は細く、そこからだんだん太くなりますが、幹も同時に大きくなっていきます。
すると次第にこの枝を幹の部分から包み込んでいくようになります。
枝自体がまだその役目を十分に果たすことで切る状態で幹に包み込まれる状態を「生節(いきぶし)」と呼びます。
この場合、枝の細胞と幹の細胞とは、枝の元の部分だけでなく周辺でも繋がりあっているわけですから、柱や板にした場合、節が抜けて落ちてしまうというようなことはありません。
非常に堅い部分でもあり、金属でできた工具や機械の刃でも欠けることがある程です。
製材などの場合、このような堅い部分を切断するときは高い負荷がかかるのでゆっくり進めていくことが求められます。
節の有無の確認を行いながら、刃を送るスピードや刃の出しすぎにも注意しながら切削や製材を行います。
生節とは異なる節もある
逆に枝が何かの理由で枯れてしまい、そのまま幹の中に包み込まれてしまう現象も起こります。
この場合は枝の細胞と周りの幹の細胞とは繋がっていないので、生まれた節は周囲が黒く染まっています。
このような節を死節(しにぶし)と呼びます。
死節が抜けて穴になっていると「抜け節(ぬけぶし)」と呼ばれ、これは節穴(ふしあな)とも呼称されます。
節に腐れが入っていると「腐れ節(くされぶし)」と呼ばれます。
無節から始まる木材の等級
日本では昔から節のない木材が好まれる傾向にあり、節の数や大きさは材木の美観の判定項目にもなっています。
一般に節の少ないものの方が高額で取り引きされています。
木材にも等級があり、節が無い材料は「無節(むぶし)」などと呼ばれ、非常に高価になります。
節の大小で価格も変わりますが、節があるからといって強度がおちるわけではありません。
多少の節が存在するものが上小節(じょうこぶし)、これに次いでもうちょっと大きい節がある状態になると小節(こぶし)になり、後は一般材となります。
他には「葉節(はぶし)」という3mm以下の小さな節で、且つ抜け落ちたり節の中身が動いたりしないものもあります。
これらの呼称は製材されたものに印刷してあることで職人が材料を選ぶ際の目安にもなっています。
現代における「節」の考え方
最近では「木に節があるのは当たり前」と割り切って、地元産のスギ等をフローリングなどの内装材に使用した住宅も多く見受けられるようになりました。
「安物」という固定観念が徐々になくなり、節の持つ自然さを積極的に活かそうという動きが活発化してきているように思われます。
そのせいか、節をデザイン的に好まれる方も増えてきて、ログハウスや子ども部屋等によく利用されているようです。
本来、木材は工業製品ではありません。
様々な環境で生育する自然のものです。
節があるものとないものがあるとすれば、それを適材適所で使えばいいだけです。
家具材ならばなおのことと言えます。
真っ直ぐなキュウリだけがスーパーに並ぶ現状に、世間が少し疑問を持つようになったこのご時世に、節がある家具があってもいいのではないか。
節を自然が織りなす木のデザインとして楽しむような発想があってもいいのではないか。
節がある家具を置くことで、部屋の雰囲気が変わることを喜ぶ感性があってもいいのではないか。
もっといえば、製品だけでなく、これまでにないものをつくれば、これまでにない変化が社会全体に起こるのではないかという期待があったのかもしれません。
樹種によって木目や色の違いを楽しめるのが広葉樹の特徴です。
であれば、節もデザインのひとつとして捉えることはできるのではないでしょうか。
節の姿は、木によっても異なり、生きてきた環境によっても異なります。
ひとつ確実に言えることは、「生きる為、木がなしうる最大の手段の痕跡」であり、その「生き様」のような表情を楽しんでみるのはいかがでしょうか。
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