和室に合う無垢材家具の樹種とは?
2022.10.31
目次
和室は日本人の潜在意識の中に根付いている
最近の新築住宅においては、必ずしも取り入れることが少なくなっている(反面、必ず入れたいという人もいます)「和室」。
暮らしの中で畳を使うという文化は大昔から日本人の生活に根付き、古くは日本最古の歴史書である「古事記」にもその文字が記されています。
潜在的な意識下にあるもの、つまり個々のDNAに刻まれているといっても良いほどのものは手放してしまうと何となく心もとなくなってしまうものです。
実際に和室のない住まいに引っ越したのちに「やはり和室が欲しい」という声が上がることもあり、温泉旅館などの畳敷きの部屋はやはり落ち着きを覚えます。
木も同様に暮らしと住まいの文化に大きく影響している
そうした意味で言えば「木」も同じかもしれません。
洋の東西を問わず、木は人の暮らしの様々な場面において、いつも私たちと共にありました。
建物、道具、食生活、多様な恩恵をこの「木」という存在から享受しながら、今日があります。
日本の住宅についても1900年代に入ってコンクリート構造の集合住宅が建てられるようになるまでは、ずっと長い間木造のものしかありませんでした。
今でも戸建ての場合は、木造を選ぶ方が半数以上と言われるほど、日本には「住まいにおける木の文化」が根付いています。
それは和室や畳といった、私たちのDNAに染み付いたもののとなっていると言っても過言ではありません。
伝統的な和室は適材適所の素材の使い方がなされている
和室と言えば、床は畳敷きであり、空間は襖と障子で仕切られ、あるいは欄間で装飾しながら、天井は板張りで床の間に違い棚…、といういわゆる「和室の作法」に則った作りにするのが一般的でした。
壁の仕上げは聚楽壁などの塗り壁とし、床柱・鴨居・落とし掛などの木部には杉やヒノキなどの針葉樹を用い、床柱にはケヤキなどの硬い広葉樹を使用するなど、文字通り「適材適所」を表すような素材の使い方がなされています。
今でもこのような純和室はやはり根強い人気があり、日本の住文化を受け継ぐためにも今後も残っていてほしいものでもあります。
現代における和室や和テイストの取り入れ方
平成を経て令和の今、新築や改築において、これまでのような「純」和室を取り入れる人は少なくなってきました。
その代わりに現代的な、あるいは独自の解釈とニュアンスを交えて「和」を取り入れたいと考える人も多くいます。
「和風モダン」「ジャパニーズモダン」というインテリアスタイルがあります。
一概に「これが和風モダンだ」と言い切れるものではないですが、畳や木材といった和室に見られる素材や仕様の良い部分をブラッシュアップして取り入れながら今の暮らしに合うようにアレンジしたスタイルは、確実にその一つといえるでしょう。
壁を土壁ではなく漆喰にしたり、襖ではなく木のルーバー(格子)扉で「緩い」空間の仕切りを設けるなど、昔ながらの和室を現代風にアレンジして、暮らしやすさと現代性を演出しています。
和室には特有の「外との緩い境界(襖や障子など隣室の気配がわかる)」や「風通しの良さ」があります。
日本人であり、日本で暮らす以上、昔ながらの考え方や合理性を現代風にアップデートさせながら活かしていく、ということも、現代の住まいの特徴であり、求められる部分でもあります。
日本の樹木は白木が多く、種類を問わず合わせやすい
そしてこうした和の空間には、どのような木(木材)を使用するかで、その印象は大きく変わります。
床柱や板の間には杉や檜などの針葉樹が用いられることが多いですが、家具としてはどのようなものが合うでしょうか。
現代において、和室の造作に使用されるのはスプルス材やピーラー材、檜や米ヒバといった針葉樹が主です。
これらはいわゆる輸入材であることも多く、後述する理由からもそれ自体に問題はありません。
ただ、やはり和室には日本の木を、と考える人もいますので、そこは個々の裁量による部分でしょう。
檜・スギ・マツなどの針葉樹以外にも長押や敷居といった強度が求められる部分にはナラやタモといった広葉樹を使うことも多くあります。
そのいずれもがいわゆる「白木(しらき)」であり、は明るくやわらかな印象となります。
そのことから、日本産のものもあるナラ材やタモ材で製作する座卓は好相性です。
明るく爽やかな、伝統的な和室の雰囲気を演出しやすくなります。
純粋に「日本の樹木」という部分でも、和室に合うということはイメージできます。
隣室や接する空間とのバランスを考えた素材選びを
そして、和室がリビングなどの一部として畳コーナーのような形となっている、つまり区切られた空間ではない和空間を設ける場合や、リビングに隣接する空間として考えた場合は、そこで使う床材との相性も大切です。
フローリングにオーク材やメープル材などの広葉樹を、と考えるのであれば、和室単体だけでなく空間全体でコーディネートを考えると良いでしょう。
その他に和室の装飾という部分では欄間も目を惹く部分ですが、そうした装飾にも劣らない華やかさという事で言えば、クス・トチといった光沢感のある樹種やケヤキの様に木目の主張がある樹も素敵なコーディネートに仕上がります。
ウォールナット材やチェリー材を使用するという選択肢
和室は日本の樹木で揃えなければいけない訳ではありません。
例えば古民家をリノベーションした和室などの場合は梁や柱をそのまま残すことも多く、囲炉裏から運ばれる煙に燻された木材の煤で黒くなった部分は味のある表情として好まれます。
そこに置く新規の家具が着色によって雰囲気を合わせたものの場合、どうしても不自然になってしまいがちです。
そこで登場するのがアメリカンブラックウォールナット(ウォールナット材)です。
黒紫色や茶褐色、赤紫色などと表現されるウォールナット材は、深い色が層になり幾重にも重なることで、淡色ではなく深みのあるグラデーションを織り成します。
単調な色ではないため使い込まれた古材との相性もよく、新旧の木々を取り持ってくれることでしょう。
世界に存在する樹木の中でも濃い色の色素を有する樹木はとても少なく、その中でも現在入手可能な木材の中でひと際人気があるのもうなずけます。
また、肌触りの良さから選ばれることの多い床材にカバザクラや杉・ヒノキ・パイン材などは、経年変化とともに赤味を帯びた色へと変化して行きます。
そうした建材との相性でお勧めするのが、アメリカンブラックチェリー(チェリー材)です。
もちろん床材としても多く使用される木ですが、和室の建材としてはほとんどありません。
しかし、床柱や鴨居や敷居などは国産の杉や檜であつらえる場合も多く、そうした和室建材が徐々に色濃く変化するのと同じようにチェリー材は深みを増していきます。
家具となっても木が生きていることを感じさせてくれる、そのような生命力を感じることができるのも魅力的です。
和室だから家具も日本の木で、というのは定番の考え方ですが、もう少し視野を広げてみるとほかにも色々な木が世の中にあることに気づきます。
世界中には20万種以上の樹木が生息していると言われています。
私ども家具蔵でも常時8樹種、最大30前後の世界中から選りすぐった樹種をご案内しています。
せっかくであれば様々な種類の木を知り、その導入を検討してみてはいかがでしょうか。
きっと森の中にいるのと同じように、住まいが自然の癒しにあふれた、居心地良い空間になるはずです。
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