ウォールナット材家具が高級品とされる理由とは
2022.9.6
多くの家具販売店で目にすることのできるウォールナット材ですが、その歴史は古く400年以上前から人々の生活を支えてきました。
その使用用途は多岐にわたり、建材・家具材といった住まいに関わるものから楽器・ライフルの銃床など日々の暮らしに根強く関わり、使われてきました。
様々な場面で活躍してきたウォールナット材は、優れた加工性もあって、今日まで人の暮らしと共にありました。
適度な硬さと粘り、そして乾燥後の狂いも少ないため、長期的に使用する木工製品には最適の木材ともいえます。
鋸断性、鉋削性ともに良いため、造形を美しく仕上ることが可能な材です。
このような加工性も非常に高いウォールナット材ですが、さらに魅力的なのがその「杢」。
まれに表れる、歪み杢、パール杢などは多くの木工家や家具職人・楽器メーカーなどを魅了しています。
そのようなウォールナットが高級材になっていった歴史を今回のコラムでお話ししていきます。
ウォールナット材の歴史
ウォールナット材が家具素材のメインストリームとなったのはいつ頃からなのでしょうか。
ヨーロッパにおける家具の歴史において、1500年~1660年頃までの「オーク時代」の後にいわゆる「ウォールナット時代」が到来します。
1660年~1720年頃に掛けてであり、その後「マホガニー時代(1720年~1770年頃)」「サテンウッド時代(1770年~1800年)」と歴史が流れていきました。
17世紀後半から使われていることを考えるとその歴史は約400年にのぼる、ということです。
この、ウォールナット時代が始まったのはイギリスにおいて18世紀に王位についたアン女王の時代に作られた家具にその名残が多く見られます。
アン女王は君主として1702年に王位につき、その繁栄は家具のスタイルにも影響を与えました。
従来のオーク材の家具や王政復古期の家具とは異なる「美しさ・快適さ・実用性」を兼ね備えたスタイルへと移り変わるなかで、華やかな装飾が特徴的なロココ様式のものは少なくなります。
一方で装飾を抑えた軽快で実用的なデザインが好まれはじめ、この頃からウォールナット材の家具が多く見られるようになったのです。
加工性の高いウォールナット材はカブリオールレッグ(猫脚)と呼ばれる丸味を帯びた脚形状や、植物などをモチーフにしたレリーフなど、エレガントさを表現しやすいことも人気を高めた理由でした。
当時の貴族がウォールナット材を選ぶようになり、高級な木材として認知され始めたのです。
その後もミラノ大聖堂などの格式高い場所でも使用され、高級材の代名詞となっています。
また、20世紀に入ってからも1950年代にウォールナット材を多用したデザイナーも数多く現れ、ウォールナットは世界中で愛されるようになりました。
唯一無二の美しい表情
ウォールナット材の最大の魅力であり、高級材と目されるのはなんといっても紫色がかった暗褐色の深い色合いと、その美しい木肌が生み出すラグジュアリー感です。
製材直後の木肌は明るい色をしていますが、辺材と心材の境にあるフェノール酸化酵素が空気に触れることによって、数時間で濃い鮮やかな紫を帯びた暗褐色へと変化します。
ウォールナットの木は空に向かってまっすぐに成長するため、多くは整った木目を持ちます。
部分的に含まれる波状や巻毛状の木目と混じりあうことによって、独特の美しい表情を作り出します。
幹自体は決して太くはないため、製材すると暗褐色の心材だけでなく、白太と呼ばれる辺材も現れます。
深いチョコレートを思わせる色合いと、周辺を彩る白い色合いのコントラストは、ウォールナットならではの唯一無二の表情を生み出します。
その独特な色のコントラストは、着色での再現は困難。
ウォールナット材の価値をより一層高めるものとなっています。
さらに無着色で仕上げたウォールナット材は時間とともに色合いを変えていきます。
深い暗褐色から黒味、紫味が和らぎ、徐々に茶色がかったやさしい表情に変わります。
これは紫外線による影響が大きく、紫外線を吸収することでウォールナット材に含まれるタンニンが酸化し、赤褐色を経由して黄味がかった明るい茶褐色へ変化するのです。
そのことで木目も際立ち、当初とは異なった表情を楽しむことができるのです。
また、寒冷地が主な生息地であるウォールナット材は「縮み杢」という表情をみせることがあります。
これは木目が波状に縮んでしわがよったように見える「杢」のことで、繊維方向の木目とは直交するように現れます。
風雨により樹木が曲がったり、枝の重みや降雪で樹木に荷重がかかったりすることで生まれると言われています。
これもウォールナット材を彩る、独特且つ美しい表情のひとつです。
「家具材のロールスロイス」と呼ばれるゆえん
ウォールナット材は家具材における「ロールスロイス」と呼ばれることがあります。
「ロールスロイス」が高級車の代名詞となったのは性能、乗り心地、耐久性、造形、ブランディングなどが総合的に高い水準にあり、また、それが認められたから、という経緯があります。
それゆえ富裕層に愛され、それが多くの人々の憧れともなり、今日の立ち位置をつくっています。
ウォールナット材が「ロールスロイス」と呼ばれる理由も同じところにあるのではないでしょうか。
最高級とも評される、その素材の特性と相まって、多くの人の心をとらえて離さない、そんな理由です。
それでいて、合わせる空間を選ばない普遍性も併せ持つウォールナットは無垢材家具の入門編としてもぴったりの素材と言えます。
家具蔵では、このウォールナット材の魅力を活かし、おおよそすべての商品をウォールナット材で製作できます。
世界に名だたる高級車と並び称される銘木の、本物の深みや艶を体感してみるのはいかがでしょうか。
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