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日本人と木の文化について その1

2020.1.10

 

日本人が育んだ木の文化


日本人は他国の人に比べ木を身近に感じ、愛する気持ちが強い民族といえます。

それは、日本の長い歴史の中で、脈々とこの風土に適応しながら出来上がっていった「木の文化」によるものではないでしょうか。

縄文、弥生時代から古代、中世、近世、近代、現代に至るまで、木はさまざまなかたちで私たちの生活に関わってきました。

生活の基盤となる家をはじめ、生活の道具である家具、工芸品など、それぞれの時代の生活文化や生活様式を代表するものの多くが木製だったといっても過言ではないでしょう。

現代では木以外にも多くの素材が世の中にあふれていますが、いつの時代も日本人の生活と共にあった木の良さを今一度再確認していきたいと思います。

 

魅力を増す「木」という素材


明治以降、これまでの木を含む天然材料に変わり、新しい鉄・コンクリートという人工材料が台頭し、それらは天然材料よりも優れたものだと信じられてきました。

しかし、100年が経ち、鉄は万能なものではなく、コンクリートも半永久的なものではない事が経験値として認知されつつあります。

建設中であるガウディのザクラダ・ファミリアは現在、コンリートも併用して建設されていますが、完成する頃には最初に使ったコンクリートの耐用年数を超えてしまうと言われています。

最近、無垢材の家・家具が改めて取り上げられているのも、消費者である私達がその点に気付き始めているからと言えるでしょう。

例えば、木は新しい程強いかというとそうではなく、時間の経過とともに強度も変化するそうです。

法隆寺の約1400年前の檜の柱を例に取ると、610年頃(飛鳥時代)に建立されたとした場合、伐られてから200~300年(飛鳥時代)はじわじわと強さ・剛性が2、3割も上昇し、そのあとはゆるやかな下降のカーブを描くそうです。

つまり、今は建立された頃と同じ強度があるという事になります。

同じ様にバイオリンも作ってから200~300年頃が一番いい音色になると言われています。

名器として名高いストラディバリウスの製作年はほとんど1700~1740年代のものであり、これも合致するというのは、実に興味深い事実です。

いいものを永く使うという事はただエコであるとか、本物志向ということだけでなく、「木」という素材の持つ長所を熟知し、生かした職人によるモノづくりからくるものだと感じるのです。

近世では強度やコスト等すぐに数値化される情報だけで「良い・悪い」が判断されてしまいがちですが、本来は素材の長所を生かすべく、こうした職人たちにより技術が高められてきたのです。

 

 

本物の木が持つ風合いと気持ち良さ


21世紀になり私達日本人は、忘れかけていた心地よさや心の満足度など、木や自然が持つ本質的な良さに改めて気付き始めていると感じます。

木にはコンクリートや鉄にはない「風合い」や「気持ちよさ」を実感できる特有の性質があります。

木は触れた時、極端に熱かったり冷たかったりすることがありません。

その理由は木の構造が小さな細胞の集合体だからです。

この空洞の中にある空気が熱を伝えにくくし、保温効果や断熱効果をもたらしてくれます。

寒暖差の激しい日本で、木は気温に関わらず、触れた時に常にやわらかな気持ちよさを届けてくれるのです。

また、木材の表面にあるミクロの凹凸は、太陽や照明などの強い光を分散させ、優しい光をもたらしてくれます。

こうした自然の持つ力を、私たちは知らず知らずのうちに求めてしまうのです。

また、木は仕上げ方でも大きく変わる材料です。

極端な話ではありますが、法隆寺再建に関わった宮大工は円柱を削る時に、現在使われている台鉋では台が木と手の間に入るため木を感じられず繊維を断ち切り、固い線になってしまうという理由で、昔使われていた槍鉋を使ったそうです。

昔のものが全て良いというわけではありません。

械化により少しでも効率化を進め、多くの方へものを提供する事はとても大切であると言えます。

しかし、人と自然が近かった時代のものは、人と素材の距離も近かったからこそ、職人が自然の良さを感じ、その良さを残して素材を使う事ができたのでは、そして使い手にも良い影響を与えていたのではと感じずにはいられません。

 

木の性質を読む


木は、多孔質が空気中の湿度を調整するという性質があるために、その動きを読むという技術が日本では発達した経緯があります。

奈良の薬師寺の東塔では、実は柱も垂木も同じ寸法のものは一本としてないそうです。

今の住宅の柱はすべてプレカットされ、同じ太さ・幅で現場に運ばれて来るため、全ての材料の寸法が異なるという事実を少々受け入れがたく感じます。

しかし、少し考えてみれば、全ての加工を人力、しかも昔の道具で行っていた事を思えばそれらは当然の事です。

それぞれ寸法の違う材を組み合わせて建物を作り出す技術は日本独自であり、ここから仕口※1・継ぎ手※2が改良されて、家具蔵の椅子にも繋がっていくかと思うと、関係のないような歴史も身近に感じられるので不思議です。

先人の知恵というものはそれこそ何百年も前から受け継がれ、改良されてきたものだと考えれば、木質系材料の歴史は始まったばかりだと感じずにはいられません。

※1仕口…2つ以上の構造部材を組み合わせて接合する箇所

※2継ぎ手…2つの部分を接合する構造の総称

 

木の良さを最大限に活かした家具づくり


家具蔵では、こうした先人たちから受け継いだ高度な木工技術を駆使して、それぞれの木材の個性を生かしながら家具づくりをおこなってきました。

それは、長い年月をかけて育った貴重な木々たちを木材として余すことなく生かし、人々の暮らしのパートナーとして生まれ変わらせたいという思いからです。

木目に宿る美しさ、触れた時の温かみと滑らかな質感は、木と真摯に向き合ってきた職人の手仕事からしか感じることができません。

こうしてできあがった家具たちが、世代を超えて使い継がれることを心から願っています。

 

家具蔵の無垢材家具へのこだわりの詳細はこちらから

日本人と木の文化について その2はこちらから

 

 


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