ケヤキの特徴と日本人との関係
2019.7.13
街路樹や公園でもよく目にするケヤキ。
樹形が美しく馴染みがあるので、皆さんもすぐにその姿が想像出来るのではないでしょうか?
家具蔵表参道店の近くにも、有名な表参道のケヤキ並木があります。
このケヤキは日本の広葉樹の中でも最高クラスの良材として昔から、神社や仏閣の建築材として使用されてきました。
一般の住居では建具や床柱に、変わったところでは楽器では太鼓や琴など広く私たちの暮らしの中で利用されてきました。
ケヤキとは
ケヤキは派のニレ科ケヤキ属の落葉高木で、日本では昔「ツキ(槻)」という名でも呼ばれていました。
高さ20~25mの大木になり40mを超す個体もあります。
葉は鋸歯型で曲線的に葉先に向かう特徴的な形をしており、その先端は尖ります。
雌雄同株・雌雄異花であり、花は4~5月頃、葉が出る前に開花します。
春の新緑はもちろん、秋の紅葉が美しい樹木でもあります。
個体によって色が異なり、赤や黄色に紅葉をします。
稀に葉の裏と柄に短毛の密生する変種があり、メゲヤキと呼ぶ事もあります。
おもな原産地は日本、中国、朝鮮半島。
日本では、北海道を除く本州、四国、九州のほぼ全域に生育します。
日本各地にはケヤキの巨木や銘木が数多くあります。
神社やお寺の境内でもご覧になった事があるでしょう。
そのうち天然記念物や県木として指定されているものは、17個体、並木1箇所にのぼります。
代表的なものでは山形県の小学校の校庭にある特別天然記念物「東根の大ケヤキ」が挙げられます。
推定樹齢は1000年、高さは28m、根回りは24mにも達します。
ちなみに樹木は針葉樹(しんようじゅ)と広葉樹(こうようじゅ)に2分類されます。
ケヤキも属する広葉樹は導管(生長する為の養分や水分を根と葉の間で流動させる組織)の配列区分により、環孔材と散孔材に分類されます。
ケヤキはこの場合、環孔材に属します。
針葉樹は広葉樹よりも組織構造は簡素で空気の含有量も多いため、英語では針葉樹をソフトウッド、広葉樹をハードウッドと呼びます。
しかし広葉樹の中にも「バルサ」という木のように針葉樹よりも軽い広葉樹も存在します。
広葉樹はバラエティが豊かな素材なのです。
環孔材は導管が環状に並び年輪となりますが、散孔材の導管は年輪に関係なく散在するので、ケヤキのようなくっきりとした木目は見えにくくなります。
その環孔材の中でもケヤキは「環孔波状材」になります。
ケヤキには綾目と呼ばれる杢が表れる事があります。
この綾目は環孔材の中で最も美しい木理を示すと言われ、他の杢に比べ豪華な感じを与えます。
樹齢300年を超える古木の中には、「牡丹杢」「縮み杢」「珠杢」と呼ばれる様な、付加価値が高くなる杢を持つ材もあります。
また枝別れした部分には「サバ杢」と呼ばれる個性的な杢が見られる事もあります。
傾斜地に生える場合は「アテ」が見られる事もあります。
太く育つと外皮が割れて剥がれ落ちる現象も見られます。
日本人との関係
日本史の中での木材としての用途から見ると、板材を得る為には木口面(=年輪が見える面)に鏨(たがね)などを当て打撃を加える様に加工をしていました。
しかし安土桃山時代に縦引きの鋸が登場し、堅いケヤキも板材としてデビューを飾ります。
その為、板材としての利用が開始される前までは掘立て柱のラフな円柱としてなら大いに重宝されました。
たとえば、弥生時代中期後半の大阪府・池上曽根遺跡出土の大型建物跡では、18個の柱穴に16本のヒノキ、2本のケヤキの柱根が残っていたそうです。
同じく奈良県、唐古・鍵遺跡の弥生時代中期中葉の大型建物跡は、柱穴23個のうち18個に柱根が残り、そのすべてに直径80センチ、長さ10メートルもの巨木なケヤキが使用されていました。
誰もが知っている有名なケヤキの建築物としては京都・清水寺の「清水の舞台」が挙げられます。
この舞台はそれぞれ300年を超す様なケヤキの大木を「懸造り」(かけづくり)という手法で、釘を一本も使用せずに組み上げられています。
力強く林立する柱は、強度や耐久性を発揮するとともに、京都を代表する美観を作り出しています。
しかし、耐久性が高いといっても、木の建築物は永遠に持つものではありません。
もしもその時が来てしまったら、もう国内で300年を超えるようなケヤキの木を大量に調達する事は出来ません。
そこで1000年を超える歴史を歩んできた清水の舞台を後世に残す為に、400年後の改修を見据え、京都北部の山では植林を行っているそうです。
一代では完成しない林業の息の長さと街の歴史を感じるとともに、それだけケヤキが大切に愛されている木だということもわかります。
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