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木材資源の枯渇

2017.9.20

いうまでもなく、私たちの生活には木が大きく関わっています。

衣・食・住、と毎日の営みのあらゆるところに「木」は欠かすことはできず、その繋がりは古来より絶えず続いてきました。

この関係性が、今後どのように推移して行くかについて推考していきましょう。

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資源の供給

一番大きく影響してくる部分は資源の供給だと考えられます。

木の供給が減れば、木造建造物は減ります。

それは同時に木の技術者の減少を意味し、さらに人の心の問題にまで影響に与えます。

過去に立派な栄光の歴史があったにも関わらず、木の文化は苦しい立場にある、とは決して過言ではありません。

地球を覆う樹木は約2万種といわれていますが、その1割の2000種が日本に生育しています。

それは常に木を敬い、慈しみ、共存してきた時代の賜物です。

そして、そんな環境にあったため私たちは永遠に木の恵みの中で暮らしていけると信じていました。

しかし、西欧の文明に追いつくことを目標とした明治のはじめから、事情は大きく変わりました。

自然は人間の克服すべき対象に変わり、技術の進歩によって自然を支配できると信じたときから、木に対する愛情は失われはじめたのです。

そして、木が私たちの手から離れ、遠いところへ去って行こうとする現在になって、ようやくその有り難みに気がつきはじめたことは周知の事実です。

 

現在の私たちをとりまく状況

現在の日本の森林面積は2500万ヘクタールで、国土の3分の2を占めています。

地球上で森林が占める面積の割合は、陸地の約30パーセントですから、その意味では日本は立派な森林国といえます。

しかし国民一人当たりの森林面積でみると、狭い国土に一億人もの人が住んでいるために、0.2ヘクタールにしかならず、世界の平均値の5分の1にすぎません。

そして、わが国は世界的に有数の木材消費国です。

1人当たりの森林面積が少ないことで木材は国内の森林資源ではまかない切れず、その消費量の64パーセントを外国から輸入しています。

国産材の供給は3割強でしかないということです。

 

輸入材の大きな供給元には東南アジアもあり、ここはいわゆる熱帯雨林が存在します。

熱帯雨林というとジャングルを連想し、いくら木を伐採してもすぐ別の木が生えてくると誤解している向きもありますが、これは間違いです。

熱帯では木が伐られてひとたび裸地になると、太陽が土地をあぶり有機物はたちまち分解し、豪雨が表土を洗い流したあとは不毛の砂漠だけが残ります。

木材輸出のために、いまアフリカでもアジアでも南米でもすさまじい勢いで緑がはぎ取られていますが、国立アマゾン研究所の学者は、「2159年までにアマゾンの主要な熱帯雨林はほとんど姿を消す」と予測し、インドネシアの国立公園長も、「このまま放置すれば森林はあと四十年で消える」と警告しています。

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割りばし論議

いわゆる木材不足の話のたびに出てくる話題は「割りばし論議」です。

私たちが毎日使い棄てる割りばしで住宅をつくると仮定すると、1年間に2階建ての家が1万戸建つ計算になります。つまり人口4万人の町の住宅分だけ、無駄に棄てているわけです。

私たちは長く木に親しむと同時に、清潔感を尊ぶ文化です。

結果、使い棄てが当たり前のようになってしまいました。

現在、国際的な材料になった木は需要のあるところにはどこからでも運んできます。

そのため木材資源の不足という実感を、日常生活の中で体験することはありません。

しかし世界的な森林資源の枯渇は、そうした楽観的な見方に対して強い警鐘を鳴らし始めています。

外材の供給がじわじわと窮屈になり、必要な木材が手に入らなくなる、「木材ショック」は何時おこるかも知れません。

 

もし歴史的な建造物である法隆寺南大門が火事で焼失したら果たして国産材で再建できるか、という話が出たことがあります。

結論は望みなし、ということでした。

東大寺の一つの門ですら総力をあげて努力しても用材は集まらないというのです。

事実、近年に建てられた主要木造建造物は、すべて輸入材のヒノキで造られています。

奈良法輪寺三重塔、薬師寺金堂、西塔、中門、天理教高安大教会の神殿、北海道神社、および京都平安神宮本殿、明治神宮の鳥居、国立能楽堂の内部…。

例外的に伊勢神宮だけは国産の木曾檜を使っていますが、それすら何時までも安泰というわけではありません。

 

よく動物の絶滅という言葉を耳にします。

このたぐいの話で有名なトキは学名をニッポニア・ニッポンといいますがその文字の示すように、以前は日本で、ごく普通に見られる鳥でした。

しかし、自然ふ化がニュースになるくらいの絶滅危惧種であり、そうした動物は世界中にたくさん存在します。

森林の伐採についても同じことがいえます。

明治のはじめまでは、伐採は人力によっていたため、おのずから抑制がありました。

しかし、電動鋸と運材機械の発達は事情を一変させました。

数百年をかけて育った木も、一瞬のうちに伐り倒され、都市に運び出されてしまいます。

地球上からは毎年日本の面積の半分にあたる森林が消えていくといいますが、このままでよいのでしょうか。

家具蔵は木を慈しみ、その恩恵に感謝し、それに携わる人々を守ること、そして使い棄ての文化からの脱却への啓蒙と行動を無垢材家具を販売する立場として進めていきたく考えます。 

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参考文献:

鹿島出版会 小原二郎著書「木の文化」

 

関連リンク

https://www.kagura.co.jp/point/01.html

https://www.kagura.co.jp/point/02.html

 

 

 

 

 

 


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