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木を活かす愛情

2017.10.8

木材を活かす。

普段の暮らしで何気なく使用している、しかし古代の昔から日常の生活では欠かせない材料である木。

その造形的な特徴は「軟らかい線で全体がふんわりと囲まれているイメージ」というところでしょうか。

それはちょうど、機械やパソコンで引いた線と軟らかい鉛筆で書いたフリーハンドの線とのちがいといったようなものでしょうか。

例えば金属が持つ硬質性と木材の持つ暖かみといった物理的な相違はあるにしても、それとは別にこの独特の輪郭線が持つ優しい雰囲気をいかに活かし、かたちにするのか。

そこにはその材料と向き合い、受け継ぎ、繋いでいくべき「愛情」があるのです。

今回は法隆寺の解体修理に携わった稀代の名工と家具蔵のものづくりを通して「木を活かす愛情」についてお話します。

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木の暖かみを伝える手仕事

法隆寺解体修理をライフワークとし、法輪寺三重塔・薬師寺金堂・西塔・道明寺天満宮などの復元を手掛けた「最後の宮大工」西岡常一氏(1908-1995)は「ヤリガンナ(槍鉋…古代の鉋)を復元させたことでもたいへん有名です。

(しかも新しい鋼を使うことなく、飛鳥時代の古釘から鍛え直した刃物を使ったそう)

ヤリガンナでは刃物のあたり具合がそのまま手に伝わって来るので、木は彫刻のノミを使ったときと同じように、繊維に沿って削り出していくことができます。

これはまさに木の造形にソフトな鉛筆の線の軟らかさと暖かみを求めたものでしょう。

木ならではの独特の造形と雰囲気は機械では出せません。

また、木の特性の1つは、同じものが2つとして無いというところにあります。

人の顔や体つきが違うように、そして人柄が違うように形状や木目、にじみ出る雰囲気が違い、それぞれにクセまであるところはまさしく生き物。

それを組み合わせるところに木工技術の粋と職人技の凄味があり、現代よりも道具や測量の正確性に欠けるところから培われてきた技術の継承が「伝統」となります。

こうした「人の手」によるモノづくりは古来より日本に伝わるものであり、現代にもその技術は生き続けています。

そして、私たち木に携わる人間たちはそれを守っていく義務があるのです。

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木と鉄の関係性

再建した薬師寺金堂は、本尊の仏像を火災や地震から守るため、内陣の部分は、鉄筋コンクリートの収蔵庫にし、その周囲を木で囲んであります。

これは様々な諸事情から、止むを得ないものだったと言われています。

木は木と組んだときに本当の剛性と耐久性が発揮されます。

飛鳥時代の工人たちから受け継いだ「木を知り、木を生かした」伝統の建築技法。

それをそのまま守ることが本当の意味での復元であり、敬意と愛情だと考えていたのでしょう。

「木を殺す兇器は鉄だ」と棟梁は言いました。

法隆寺にも最低限の金物釘は使われていますが、基本は木組み。

現在の洋釘の寿命は20年と言われており、その鉄は錆びて周りの木を駄目にすることから、鉄を使った建物の生命力は木に比べてはるかに短いのです。

木組みだけなら千年以上もつ建物を、鉄と無理心中させるのはいかにも惜しい。

それが西岡氏の信念でした。

 

木を活かすには

西岡棟梁の木を生かす愛情の話をもう少し。

木は建物に使うとき、立っていたときの姿のままに使う気くばりが必要です。

この点においても西岡氏は最大限の気遣いを持って、改修に当たりました。

枝が多く出ているのは木の南側であることから、薬師寺では太い丸太から4本の柱を木取ったときは、南側の2本は建物の正面に、北側の2本は裏側に使うというように差配しました。

また、曲がった梁が必要なときは、用材の中からその形に近いものを選んで削りあげます。

繊維が通って目切れがないようにとの配慮です。

またアテ(木の根元の曲がったところにできる硬い部分)のある木は圧縮力のかかるところに使い、木目の素直な木はよく目に入る部分に使います。

新しく再建した薬師寺の西塔では、16本の柱のうち内側の4本の柱には300トンの荷重がかかるので、節の多い木を使い、外側の柱には100トンしかかからないので、素直な木を使いました。

さらにねじれた木は二つに割って反対向きに組み合わせ、力のバランスで狂いが出ないようにしてあります。

これらはすべて飛鳥の工人の知恵から学んだことであり、ここまですることが愛情の現れだったと考えます。

家具蔵の家具作りも同様。

木で木を組むことを第一とし、木目までもデザインと考え、適材適所な材選びを行う。

これは全て、全てのお客様により長く、より快適に、より観賞に耐えうるものをご提供したいからにほかなりません。

 

西岡棟梁の言葉、行動のひとつひとつに木を愛し、日本の伝統に敬意を表する姿勢がにじみ出ています。

そして、家具蔵はその姿勢に深く共感します。

よいものをつくるには、なによりも愛情。我々の場合は木への愛情ということでしょう。

古代の工人たちもその想いがあってモノづくりを行ったからこそ千年の風雪に耐えるものが出来上がりました。

モノづくりに留まらない、深い何かを教えてくれる、そんな気がします。

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関連リンク

https://www.kagura.co.jp/kagu/works/

https://www.kagura.co.jp/kagu/designer/

 

参考文献:

鹿島出版会 小原二郎著書「木の文化」

草思社 西岡常一著書「木のいのち木のこころ〈天〉」

 


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