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日本人と木のつながり

2017.10.23

日本は世界有数の森林国ということは当コラムでも何度かお話してきました。

しかし、都会の暮らしでいわゆる森や山を感じる機会はたいへん少ないものです。

しかし、街路樹や公園木など、私たちの暮らしの周りには多くの樹木があります。

昔から代々、樅(もみ)の大木が育つことからその名前が付いた「代々木」や、(諸説ありますが)6本の松が生えていたことから名付けられた「六本木」など、樹木が地名の由来になっている土地も多くあります。

普段なに気なく見ているケヤキ並木やイチョウ並木も紅葉の時期には町の主役として、私たちの目を楽しませてくれます。

また春の始まりには桜が咲き、桜並木は多くの人でにぎわいます。

神社や公園などで樹齢100年を超える大きな樹木を見ていると自然の持つ力強さを感じ、敬虔な気持ちになってしまうといった人も多いのではないでしょうか。

 

木材工学・人間工学・インテリア工学の第一人者である小原二郎氏は著書の中でこのように述べています。

「日本民族の木材に対して持つ愛着の深さと感受性の鋭さは、他の民族とは比較にならないほど強いものがある。

その由来は、生きた樹木をみて感じる日本人の信仰心にまでさかのぼらないと、本当によく理解できない。」

(小原二郎著/鹿島出版会 「木の文化」より抜粋)

 

木のつながり1.jpg

 

 

神話にみる日本人と木の関係性

 

私たちの祖先は、この世の中には「産霊神(ムスビノカミ)」がいて、土地や山川草木に魂を与えると信じていたそうです。

「八百万の神」と言われるように、世の中の万物に神が宿り、それに対して信仰心を持って暮らしてきました。

平安時代の中期に編纂された辞書「和名抄」には「木霊(木魂)」という言葉が出てきますが、これは木には精霊や霊魂が宿っているという意味だと記載されています。

ジブリのアニメでお馴染みのトトロやこだまも、このような考え方をヒントにして生まれたのではないでしょうか。

 

また、巨木や巨樹と言われるような巨大な樹木は天と地を結び、これを伝って神が降臨すると信じられていました。

集落ごとの神聖な場所ではそこに「御柱(おんばしら)」と呼ばれる巨大な柱を立てて信仰の対象とする「柱信仰」があったと言われています。

青森県の三内丸山遺跡は縄文時代の文明を紐解くものとして有名ですが、ここでは6本の巨大な柱が見つかっており、遠くの山に落ちる太陽への信仰があり、柱を天と地の架け橋にしていたと推測されています。

このように樹木を信仰の対象にする考え方は、樹木が伐採されて木材になったあとも柱として引き継がれます。

また、神社のお守りの中身として最も一般的なのは祈祷された木札です。

その木札の中に神を宿して、信仰の対象としているのです。

御柱と言えば、日本三大奇祭の一つとされる長野県諏訪大社の「御柱祭」は全国的にも有名ではないでしょうか。

これは山中から樅(もみ)の大木を16本切り出し、長野県諏訪地方の各地区の氏子の分担で4箇所の各宮まで曳行し社殿の四方に建てて神木とする勇壮な祭です。

古事記では、この御柱祭の起こりが描かれています。

出雲のオオクニヌシが高天原から降ったニニギに国譲りを承諾したとき、唯一反対したタケミナカタは武神タケミカヅチに追われることとなりました。

そして諏訪湖畔まで逃げてきて降伏し、この地から出ないことを誓ってようやく許されます。

その時に結界として神社の四隅を仕切った、という話です。

しかしながら実際にはこの御柱祭は神話以前からの諏訪地方の信仰との関係が深いといわれ、古代日本における信仰のひとつ「ミジャグジ」の拠り代ということです。

 

木のつながり2.jpg

 

日本人の自然観

 

こういった日本人の精神構造や美意識、自然観はどのようにして生まれ、根づいたものなのでしょうか。

歴史家の林屋辰三郎氏は

「日本では、人間がすべて自然と共存せざるを得ない仕組みになっていた。

日本人の思想史というものも、儒教や仏教といった体系をもつ文献的な大思想よりも、(中略)自然と密着した民族的な思想の方が、はるかに現実的なものであった。

したがって、日本人はそうした自然のなかに歴史を考え、美を見出したのである。」

「(中略)古代人の思想は、とくに自然観において特徴的である。草木みな能く物言うといわれるように、人間の周囲をとりまく樹木に精霊を見出し、さらに神の降臨を感じとったのであって、自然観を形づくる根幹に樹木があった。」と述べ、日本人が自然との共生をし、そこに美をも見出した理由を明らかにしています。

木や自然のものを材料として使う面白さは、一つ一つが違う表情のもので出来上がるということです。

人それぞれ性格や見た目が異なるのと同じように、木にも性格があり見た目の違いがあります。

それを昔から日本人は見分け、適材適所に用い、時には信仰の対象ともしてきました。

 

家具蔵は家具作りの根底として、このような日本人の古き良き感受性を受け継ぎ、風化させること無く後世に伝えていくことを使命としています。

そのために、木を原木のままで仕入れ、木目を読みながら適材適所に材を取り、熟練の職人が伝統の木工技術を継承しながら一点一点を手作業で仕上げていきます。

是非、家具蔵の各店舗にて、人の手によって仕上げられた無垢材の家具に触れてみてください。

ひとつひとつの表情があなたに語りかけてくるものがあるかもしれません。

 

木のつながり3.jpg

 

関連リンク

https://www.kagura.co.jp/kagu/concept/1.html

https://www.kagura.co.jp/kagu/works/material.html

参考文献:

鹿島出版会 小原二郎著書「木の文化」

草思社 西岡常一著書「木のいのち木のこころ〈天〉」


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