「システムバス」の進化
2020.5.12
日本人とお風呂
日本のお風呂の歴史は非常に古く、6世紀頃に中国から伝わったとされています。
仏教で、お風呂に入ることは「七病を除き、七福が得られる」と説かれていました。
そのため、単に「体を洗う」ということだけでなく、健康と福を得るための大切なものとされてきました。
その考え方は、お風呂好きな私たち日本人に今も受け継がれ根付いていると言えます。
昔は「湯」とは今でいうお風呂と同じで「湯」に体を浸すものでしたが、一方「風呂」は蒸し風呂のようなもので、蒸気を発生させ、その蒸気に人間が蒸せられて垢をこすりおとし、掛け湯をするというものでした。
言わば現在のサウナのようなものです。
ただ「湯」に体を浸すことや、蒸し風呂に入ることは当時の人々にとっては贅沢なもので、武士や一般庶民は、普段は水で体を洗う「行水」や水でただ汚れを落とすのが一般的でした。
据え風呂の一般化
江戸時代の初期に、井戸水を沸かし肩まで浸かる「据え風呂」が登場し、一般庶民にも広がっていきます。
この当時、通気口から入る風で薪が燃え続け、鉄の筒が熱せられることによってお湯が沸く「鉄砲風呂」が江戸の主流であり、関西では桶の底に平釜をつけてお湯をわかす「五右衛門風呂」が普及しました。
そして、明治時代になり銭湯の様式は更に大きく変化します。
蒸し風呂式をやめ、浴槽は板間に沈めてお湯をたっぷり入れ、さらに洗い場を広く天井を高くし、開放的で清潔感のある銭湯になりました。
大正時代になるとさらに銭湯は近代化し、板張りの洗い場や木製の浴槽は姿を消し、タイル張りとなりました。
後に、水道が普及すると浴室に水道式のカランが取り付けられ、衛生面においても向上し、内風呂が一般化しました。
システムバスの誕生
システムバスとは、床、バスタブ、天井、壁などのパーツをあらかじめ工場で成型してユニット化し、それを現場に運んで組み立てて作る浴室のこと。
手と技術でつくる従来工法の浴室と違い、工場生産品なので品質や仕上がりが均一で安定し、後期期間が3日前後と短いのがメリットです。
日本では1964年の東京オリンピックの際に、当時急ピッチで建設中だったホテルニューオータニでの内装工事を、可能な限り効率的かつ合理的に進めるために考案されました。
浴槽の進化
浴槽を自動洗浄する機能が付いたのは1970年代。
スイッチ一つで洗浄剤とお湯を噴射して掃除してくれる機能ですが、その後も洗浄力や省エネの改良が重ねられていき、1980年代に入ると、水垢や皮脂汚れが付きにくいコーティングや新素材の開発が進みます。
見た目の美しさを損なわず、汚れを弾くコート層が一体形成された浴槽です。
2000年代にはお湯が冷めにくく追い炊きを減らせる高断熱浴槽が登場し、湯温40度の保温時間が、従来の約2倍の4時間以上になりました。
以降も開発が進み、現在では5時間以上となっています。
また、ここ最近では、毎日の疲れをとるリラックス機能として肩湯や心地よい刺激を与えてくれる打たせ湯機能、忙しい女性のためにミクロのオイルと酸素の泡が全身を包んでお肌の水分を保持し入浴だけでお肌のケアができる機能等、バスタイムのリラックスに重きを置いたシステムバスが登場しています。
床材の進化
2000年代に入ってから、水はけがよく、汚れも一緒に流せるよう緻密に計算された溝パターンを持つ床材が登場。
乾くのに時間がかかりカビが生えやすかった浴室の床に変化が表れます。
現在では床そのものに汚れがつきにくい工夫が施されたタイプに変化しています。
壁のデザインや光による演出
前述したように、時代が進むにつれ浴室は人々のやすらぎと癒しの空間としての役割を大きく担うようになりました。
2010年ごろからは浴室の壁の色や柄が進化し始め、壁の一面、または全面を木目調や大理石調など自分の好きなテイストにすることができるようになりました。
現在は360度デザインがつながった全周アートウォールな浴室が登場し、HP上のシミュレーションで5000万点以上のイラストや画像から好みの壁を選べるように。
今後の注目は、光によるリラックスタイムの演出です。
入浴中に視覚的にも癒しを得られるよう、その日の気分で明るさや色を変えられる「調光調式システム」が選べる浴室が登場しています。
「我が家」に求めるシステムバスの機能
システムバスは、汚れにくさやくつろぎを重視した機能だけでなく、浴室暖房や衣類乾燥、ミストサウナなど、暮らしのサポーターとして幅広く進化してきました。
その中でサイズや予算を考慮し、どこまでの機能性を我が家に求めるかという判断が必要になります。
高齢者から小さな子供まで安全性に配慮したつくりになっているのはもちろんのこと、我が家ではどんな入浴スタイルなのか、好みの色調やデザインはどんなものかを考慮して選びたいものです。
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