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人間工学と機械の関係性を知る

2017.8.19

人間工学を知るにあたり、「機械」は切っても切り離せないものがあります。

例えば、自動車。

身近なものであり、現代の生活には切っても切り離せないものですが、世界的に定評のある日本車や有名メーカーの外国車の他、新興国のものも進歩して、あまり見劣りがしないまでに成長してきました。

しかし、細かい点になるといろいろと問題があるようなのです。

人間工学的な研究も、とかく忘れがちにされているもののひとつで、既に研究が進んでいる有名メーカーに追随すべく、新興国メーカーでの研究も急ピッチで進められています。

ブレーキの重さはどれくらいが適当か、バックミラーはどんな形、大きさにしたらよいか、ラッシュ時にはどれくらい疲労するか…テーマは数えきれないほど多岐に渡ります。

人間工学的な配慮を払った自動車ほど、安全で乗りやすいことは言うまでもありません。

これは家具や住まい、その他の分野においても同じことです。

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人間工学と機械と生活

人間工学は、自動車や電車、または宇宙船など複雑なシステムや構造を持つものこそ、研究対象になりえます。

その理由として、人間の機能と機械の働きを最大限に適合させていく問題、つまり人間と機械系のバランスをとりつつ、全体としての性能を高めていかなければならない問題が複雑にからみあっているからなのです。

人間とモノの関係性、という意味では対象は違ってもこのあたりは普遍性がありますね。

私たちにとって身近なものでは、例えば家具はもちろん、キッチンのレイアウトや仕様、その他の日常の生活に必要な様々な機器類の設計、または衣類のデザインにもその考え方は応用されています。

言い換えれば、日常の暮らしの中にも人間工学的な立場から考えられるべき対象がいくつも存在している、ということです。

流し台の高さはどれくらいが作業しやすいか?

水道の蛇口はどんな形がよいか?

棚はどこの位置に置き、どの部分に吊るすのが使いやすいか?

ベッドはどれくらいの弾性を持ったものが快適なのか?などなど…。

どれも毎日の生活を快適にするためにおろそかにできない問題です。

私たち家具蔵も設計においてはその部分にもっとも腐心しています。

快適さもさることながら、作業の能率も考慮する必要があるため、人間の手の作業域の研究も必要となってきます。

作業がしやすくなれば、便利で効率も上がるので、使い勝手を良くすることにつながってくるのです。

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使い勝手の科学

イタリアには、有名な靴メーカーがたくさんあり、著名人たちもこぞってイタリア製の靴を履いているのは有名なことです。

もちろんブランド性や著名デザイナーが手掛けていることもありますが、元をたどればイタリアの靴の評価が高いのは、皮革の加工のあくなき探究とその中にあるべき人間の足の研究、言い換えれば、履き心地にこだわって製作をしているからなのです。

「しょせん靴は人のためにこそある」とも言われていますが、イタリアの製靴は、まさに人間工学的な追求なのです。根本的な「履く」ということを軽視し、見た目だけを重視する、もしくは目新しさだけを狙うだけで本当に良い履物はできません。

人間の体形や機能をしっかり捉えたうえでデザインがされてこそ「良い靴」になりえます。

(これは椅子やソファなど自分の身体を預ける家具でも同じことです)

これらをふまえて、人間工学を「使い勝手の科学」という言葉で表すこともあります。

これは、機械や道具の使いやすさと密接に結びついた科学、という意味合いです。

人間の存在するところには、どこにも人間工学があることになります。

人間工学はあくまで学問の一分野です。

ですが、厳密に学問的ではないにしても、私たちのまわりには、人間工学的な考え方と研究の方法を応用すれば、その性能が改善されて、実生活に役に立つものが数多くあります。

それらを「暮らしの中の人間工学」と呼び、そういうテーマで周囲を見渡せば、生活を快適に、能率的にするために、人間工学が役に立ってくるのが分かります。

 

人間と機械の関係性における人間工学、という点からは少し脱線しました。

他の分野でも人間工学は社会に取り入れられ、役に立っています。

例えば医療分野。

家具関連で言えば、チャールズ・イームズは負傷した兵士の脚用の添え木を成型合板で製作し、それは15万本も製作される大ヒットとなりましたが、これもやはり人間工学を利用したものです。

その後、科学の進歩と機械の発達のなかで「生体エンジニア」と呼ばれる、人間や動物などの生命を持つものの機能と工学上の技術とを結びつける研究を進める分野においても人間工学は重要な役割を果たしています。

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その他にも、普段私たちが使っているパソコンのキーボードの前身にもなる、タイプライター。

このキーボードの設計には、エンジニアが研究しなければならない余地がたくさんありました。

英語の構造と人の手の動きを計算に入れて、キーボードの配列の仕方を考え、タイピストの手や指の疲れを少なくするように設計。

完成するまでには改良に改良を重ねられました。

途中キーボードの配列を変えたりしたことで、今まで使っていたものに慣れてしまった人は使いづらくなってしまい、放棄されてしまった過去もあります。

結果的には成功を収めましたが、人間の習慣というものがいかに大事で、計り知れないほどの力をもっているということを学ぶ出来事でした。

人間工学の観点からものを考える際には、人の生活習慣、または癖といった部分が必要不可欠となります。

機械や道具を使う場合、必ずその習慣という部分がポイントになってくることは住まいや家具の世界でも共通して語れる部分です。

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参考文献:

実教出版株式会社 小原二朗著書「暮らしの中の人間工学」

講談社 小原二朗著書「人間工学からの発想-クオリティ・ライフの探究」


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