「チェスト」「キャビネット」「リビングボード」の違いとは?
2023.9.9
収納家具は使用目的に応じて呼称が変わる
収納家具というものはたいてい、その使用目的に応じて呼称が変わります。
書籍を収納しておくなら本棚・書棚・ブックボード。
食器を仕舞っておくのは食器棚・カップボード、あるいはダイニングボード。
テレビを載せておくものはテレビ台・テレビボード、あるいはAV機器も一緒に置いておくことも多いのでAVボード、というように名前を見るだけで何のための家具か、ということがすぐに分かります。
混同しがちなものの違いを知る
一方で混同しがちなもの、あるいは明確な使用目的が不明瞭なものもあり、例えば総じて「キャビネット」と呼ばれているものが違う場面では「リビングボード」「サイドボード」と呼ばれていることがあります。
「チェスト」はその表記の意味が分からなくても、実物や画像を見ればいわゆる引き出し収納ということが分かりますが、これは「タンス」と呼んではいけないのか?ということもあります。
まず初めに前提を言えば、キャビネットは箱型収納の総称であり、その意味で言えばチェストやカップボードの類もキャビネットと呼ぶことに差し支えはありません。
ですので、家具販売店などで「サイドボード」という表記がある商品を「キャビネット」と呼ぶことにはなんら問題はないのです。
しかしながら呼び名が違うということは何らかの意味があります。
厳密に言えばその由来や使用方法が異なるわけで、元来の意味や使用目的を知ると家具選びもより楽しくなります。
今回は「チェスト」「キャビネット」「リビングボード」の3種類でその違いをご案内していきます。
チェストとはどのような家具か
「チェスト」とはつまるところ、引き出しのみで構成された収納家具のことです。
日本名では、「整理タンス」に相当する家具と言ってよいでしょう。
元々は13世紀前後の中世ヨーロッパで使われていた、長方形で蓋付きの木製箱で衣類や貴重品などを収納するためのものが起源とされています。
海賊映画などに出てくる宝箱をイメージしていただくと分かりやすいでしょうか。
その後、17世紀ごろになると、蓋を開けるのではなく、躯体の前面から箱を引き出し、衣類や貴重品が取り出せるように変化していきました。
そのため、現代ではチェストという名称は一般的には引き出し収納を指す言葉として使われていますが、扉や蓋が付いている収納家具をチェストと呼んでも間違いではありません。
ただし、家具販売店でも大抵はチェスト=引き出し収納という認識があるため、引き出し収納以外のものを探している場合で、すべての収納家具を「チェスト」と呼ぶとその理解に多少の時間を有するかもしれないので注意は必要です。
衣類用の引き出し収納を正しく英語で表現するのであれば、「チェスト(chest)オブ(of) ドロワーズ(drawers=引き出し)」となります。
チェストは、生活環境によって必要な引き出しの数やそれぞれの深さも変わります。
そのため、チェストには高さによって種類の名称が変わります。
高さ2mを超える「タワーチェスト」、人の肩程度の高さの「ハイチェスト」、腰高の「ローチェスト」などが代表的な例となります。
キャビネットは箱型収納の総称
「キャビネット」は箱型収納の総称です。
基本的にはリビングボード、あるいはサイドボードやチェスト、そしてカップボードなど全てキャビネットと呼んでも問題はありません。
家具販売店では目的に沿った商品の紹介が必要なため(その方がわかりやすい)、それぞれ呼称は異なりますがその意味で言えば呼称と使用目的は違っていても問題は無いでしょう。
例えば「カップボード」の本来の意味は「扉付きの大型収納家具」のことであり、食器棚に限定されたものではありません。
米国などではカップボード=食器棚と意味づけられているところもあり、日本でもダイニングボードとカップボードは同義で語られることが多いですが、英国ではキッチン以外の部屋で、且つ食器以外のものを入れる収納でも扉付き大型家具としてカップボードと呼ぶことがあります。
家具蔵のダイニングボードも本棚や飾り棚として使用している人があり、呼称と使用目的は異なっていても良い好例となっています。
サイドボードとリビングボードの違い
「サイドボード」と「リビングボード」、いずれもそこから想起するのは腰高の収納家具です。
ただし、これも本来の由来と意味合いは両者で少し異なります。
サイドボードは、リビングやダイニングで使われる扉付きの収納家具であり、その定義は「高さが低い」ことにあります。
一方「リビングボード」はリビングスペースに置かれる収納家具全般を指す言葉です。
サイドボードの名前の由来は「サイドテーブル」にあります。
ダイニングテーブルの横に配置され、主に配膳台の役割を担ったサイドテーブルは、カトラリー類を入れる容器やワインクーラーなどとセットで使われていました。
18世紀に入るころにはそれらを収納できる機能を持たせた、現在のサイドボードに近い形の収納家具が登場し、現在の発展に至ります。
食卓の傍らで食器を用意し、料理を取り分ける目的で使われていたので高さは人の腰部くらいまでが限界で、チェストとの大きな違いはカトラリー類が収納しやすい引き出しと、ワインクーラーなど大きめのものが収納できる内部に棚のある扉収納の組み合わせが一般的である点です。
リビングボードは、じつは「リビングルーム」と台などの意味を持つ「ボード」を組み合わせて出来た和製英語です。
その他に「ダイニングボード」や「キッチンボード」も、実はこれと同じ由来を持つ名称であり、その点を知っていると「通」と思われること間違いなしです。
このように、同じものを指す言葉なのに、地域や時代によって意味やそれを示すものが違うことは家具以外でも往々にして存在します。
家具蔵各店では、このような混同しがちな家具の種類もきちんと把握し、お客様の実情を伺いながらニーズに沿ったものをご提案できるスタッフが数多く常駐しています。
お気軽にご相談ください。
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