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森林と海の「深い関係」とは?

2023.8.28

 

 

昔から「豊かな森は豊かな海を育てる」ということが言われてきました。

同じ自然ではありながら、対極にありそうなイメージで一見無関係にも見える両者。

しかし、森林と海には切っても切れない深い関係があるということがこの言葉から読み取れます。

なぜ、そのようなことが言われるのでしょうか。

 

森林と海は川を通じて「繋がっている」


 

 

森林と海は間接的に「繋がっている」といえます。

森林と海は「河川」を通じて繋がっているのです。

森林、あるいは山間部に降り注いだ雨は、葉や腐葉土の中に蓄えられ、そこから徐々に地中を伝わってゆっくりと川へ流れ込みます。

この過程で地中の栄養分や有機物が水の中に溶け込んでいきます。

そこから生まれた栄養分豊かな水が川を通して海へと流れていきます。

この栄養分は植物プランクトン、海藻などを経由して、動物プランクトン、魚類などへと引き継がれていきます。

それは森林から始まる海の中での壮大な食物連鎖の世界です。

豊かな土壌が生んだ栄養素が巡り巡って海の中の生き物の糧となり、それが「海を元気にする」ことに繋がります。

漁業に携わる人々は、昔から海の近くに広がる森林を豊かに保ち続けることが魚を集める=大漁に繋がることを知っていました。

そのため、昔から海の近くの森の保全に取り組んできた歴史があります。

森に神社を建てることでその存在自体を畏敬し、立ち入りや伐採の制限をかけ、同時に「魚つき保安林」をつくることで、漁業資源を守ってきました。

 

森林と海が相互に必要不可欠な存在


 

 

豊かな森やその土壌があって、豊かな海は成り立っています。

同時に海では海水が蒸発することで上空に雲が発生していき、それが雨雲となることは誰しも知っています。

その雨雲が陸地へと流れ、雨をもたらすことで森林はより豊かになっていきます。

森林が豊かな海を保つ手助けをすると同時に、海もまた、豊かな森林を作るのには必要不可欠な存在と言えるのです。

 

魚つき保安林とは


 

さきほど耳慣れない言葉が出てきた、と思った人もいるでしょう。

「魚つき保安林」とはその名のとおり、機能確保のために様々な規制がある「保安林」であり、魚の繁殖や保護を目的として海岸や湖岸に自治体が設けている森林のことです。

現在は全国で5.8万ヘクタールの森林が「魚つき保安林」として指定されています。

この森林の栄養分が地下を通って岩礁地帯などから湧き出て、海や湖に栄養分を与えてくれるのです。

そこでは前述のようにプランクトンがよく繁殖するため、豊かな海を育みます。

また直射日光を遮ることで、生物の多様性が高まる沿岸域の海水温を抑えることもできます。

その他にも風波を防ぎ、水を美しく保つなど、海の生物が繁殖しやすい環境を整えてくれる役割を果たすのです。

 

森林は水量を調整してくれる存在でもある


 

 

近年は気象の大きな変化、いわゆる異常気象が問題になっています。

この点で見ると、森は海を、そして陸地を「守っている」ことがわかります。

それは、大雨などで多くの水量が発生した場合でも、その水分が土中にも浸透していくことで極端な水量が一度に河川へ流れ込むことを防いでいるのですが、これは陸地に対しての恩恵といえます。

この水量の抑制だけではなく、生態系に悪影響を与えると考えられている微細粒子が河川に排出されることを抑えることにもつながるため、これが森林から発生する植物プランクトンや海藻などの生育に必要な栄養物質の安定供給にも繋がっているのです。

これが回りまわって海を守る結果にもなっています。

 

豊かな森林土壌と言える「フルボ酸鉄」


 

「フルボ酸鉄」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?

この「フルボ酸鉄」は森林の土中に発生する成分のひとつです。

「フルボ酸鉄」が生まれる過程としては、森林の地面に落ちた葉や木、虫の死骸などが土の中に埋まり土中の微生物によって分解されることから始まります。

その後「森林土壌」といわれる土の層を形成していきますが、この層を形成する工程でフルボ酸という物質が生成され、このフルボ酸が土中の鉄分との結びつき「フルボ酸鉄」が生まれます。

「フルボ酸鉄」は、川を介して海へ流れていきますが、「フルボ酸鉄」を含んだ川の水には海水の100倍から1000倍もの鉄分が含まれています。

豊富な鉄分が含まれた水が海に流れると、プランクトンや海藻に吸収されやすくなり、それは海中に住む生物の貴重な成長源となります。

フルボ酸鉄は豊かな海をつくるのに大きな役割を果たしています。

 

海の生物の約7割が沿岸域で生息している


 

 

海全体に生息する生物の約70%が、陸地に沿ったわずかな領域、つまり沿岸域(水深50m程度までの海域)で暮らしています。

その範囲は海全体のわずか0.6%しかない狭い範囲となりますが、川から栄養分が流れ込み、プランクトンや海草などから食物連鎖が生まれ、驚くほど豊かな生態系が成り立つ条件がその僅かな沿岸域に揃っているということでもあります。

栄養分をたくさん吸収した沿岸部のプランクトンや海藻は、多くの魚類を呼び寄せるのです。

 

 

森林と海の深い関係。

日常の中でなかなか考えることがないテーマですが、魚類を始めとする海の生き物に関係していることを踏まえると、日常的に海産物を口にする私たちの生活にも深く関係していることがわかります。

その海へ大きな貢献を果たしている森林とそこから生まれる無垢材家具。

その観点で家具を見てみるのもまた面白いかもしれません。

 

家具蔵の無垢材家具づくりの詳細はこちらから

 

 

 

 

 


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