キッチン収納 “スライドレール“の違いや構造とは?
2024.11.4
目次
金物の進化がキッチンの進化をつくった
システムキッチンの誕生から50年。
キッチンのフロアキャビネットは扉タイプから引出タイプが主流となっています。
バックセット収納も食器棚を置くスタイルだけでなく造作として作るケースや、キッチンの近くにパントリーを設けるなど、住宅空間の使い方はキッチンを中心に様々なスタイルに変化しています。
そうした収納様式の変化を可能にしたのが、扉や引出しに用いられる金物の類の進化です。
開き扉に使用される丁番と呼ばれる金物も様々な種類があります。
キッチンで使用されるものでは建て付け調整が細かくできるものや、静かに優しく扉を閉じることができる「ソフトクローズ機能」が付いているもの、地震の際に扉が開いて収納物が飛び出して来ないようにする「耐震ラッチ」というロックが掛かるパーツをつけているものなど、より安全で使いやすいような工夫が諸所に施されています。
今回は、その中でもキッチンのフロアキャビネットの引き出し収納に用いられる「レール金物」を中心に、金物の種類や進化についてまとめています。
これからキッチンを選ぶ際に、チェックするポイントの一つとして参考になれば幸いです。
スライドレールにも構造の違いがある
引き出しの機構には「吊桟(つりざん)」を用いたものやプラスチック製のレールを使ったものがあります。
キッチンの場合は大抵引き出しの幅も広いことが多く、大量のものを収納する際にスムーズに引き出せるようにという意味もあって金物のレールが多く使われます。
その構造の違いで大きく分けるとスライドレールの場合、「ローラーレール(タイプ)」「ボールベアリング(タイプ)」に分けることができます。
またその取り付け方の違いで「サイドマウント」「アンダーマウント」「底引き」「ボックス」などの種類があり、この構造と取り付け方法の組み合わせは用途に応じて使い分けられています。
ローラーレールとボールベアリングの違いは
まずは構造の違いから見ていきます。
「ローラーレール(タイプ)」は金物のレールをボックス本体と引き出しの側面に取り付け、レールの上を樹脂製のローラーが転がることで引き出しを開閉できる構造です。
シンプルな構造のものからローラーが複数個・複数の向きについているものなどがあります。
価格もシンプルな構造で安価なものから、後述する「ボックス型」と組み合わせた構造を持つハイグレードなものまで様々です。
キッチンの場合は「ローラータイプ×ボックス型」の組み合わせを持ったレールを使うことが主流となっています。
「ボールベアリング(タイプ)」は一般的な収納家具の場合でよく見られます。
スチールもしくはアルミやステンレス製で断面がコの字のようになっているレールを組み合わせ、間に入った金属の小さなボールを転がしながら引き出し側のレールがスライドしていく仕組みです。
素材の種類は樹脂・スチール・アルミ・ステンレスと多様で、引出しの奥行きによって長さも200ミリ~700ミリと概ね50ミリ刻みでサイズが用意されていることもあり、ローラーレールよりも圧倒的に種類が多いのが特徴です。
私ども家具蔵でもキッチン以外の収納家具ではで収納物にある程度の重さが想定される際には、開閉しやすいようにボールベアリングタイプのレールを使うこともあります。
ただし使用頻度が低い場合に引き出しづらくなることや、それにより埃が溜まると開閉の際に引掛りを感じるなどがあり、その際にはシリコンスプレーやオイルでの対処が必要となります。
取り付け方法は「サイドマウント」「アンダーマウント」「底引き」「ボックス」の4種
次にレールの取り付け方法の違いについて見ていきます。
基本的にサイドマウントと呼ばれるもの、つまり引き出し内箱の両サイドにレールを取り付ける方法がローラーレール・ボールベアリング、いずれの場合も多く見受けられます。
取り付けが一番簡単で、不具合がおきた際にもレール全体が見えるのでその箇所を見つけやすい取り付け方です。
一方「アンダーマウント」は本体側のレールはボックス側面に取り付け、引き出し側のレールは内箱の底面に取り付ける取り付け方です。
その特徴は引き出しを開けた際に内箱のサイドに金物が見えず、意匠性を損ねないところにあります。
一見するとレールが見えないので取り外しがしづらいのではと思われがちですが、クラッチを握れば簡単に脱着できるタイプもあるので、選ぶ際にはメンテナンス性も確認したいポイントです。
ただし引出しの底面にレールを付けるため、サイドマウントに比べると引き出し内部の深さが若干浅くなります。
仕舞うものにもよりますが、高さのあるものを収納する場合には注意が必要です。
「底引き」は家庭用の収納で使われることは少ない取り付け方ですが、アクセサリーやハイブランドの什器で上から見るショーケースでよく使われる取り付け方です。
閉じている時だけでなく、引き出した時にもレールが見えず、意匠性に優れています。
ただ、こちらもアンダーマウントと同様、下面取り付けのため高さのある収納物には不向きです。
また耐荷重は比較的弱い取り付け方のため、どちらかと言えば「飾る」収納をメインとする際に採用されます。
そして、キッチンで一番多いのは「ボックス型」と呼ばれるタイプです。
このタイプはレールと金属製の側板が一体になっていて、側板の内部にレール機構が備わっているため意匠性が高いのが大きな特徴。
高重量にも耐えることができるものが多いため鍋や皿などを収納することが多いキッチンに向いているのです。
また、面材の傾きなどの調整ができるものも多いので、引き出しを閉めたときの意匠性も長くキープできるのが特徴です。
ビルトイン浄水器のカートリッジを交換する時などで引き出しを取り外すときは少しコツが要りますが、慣れれば問題なく取り扱うことができます。
様々な機能と進化がある引き出しレール
そのほかにもレールの進化の例としては「ソフトクローズ機能(閉めるときに勢い良く閉めても静かに閉まる)」「プッシュオープン機能(取手やハンドルがなくても面材を押すと開く)」「耐震ラッチ(扉だけでなく引き出しにも)」「電動オープン(膝で触れるだけで自動オープンする)」
など引き出しひとつをとっても、様々な進化を見ることができます。
このように、スライドレールだけでもバリエーションがたくさんあり、キッチンでは特にその機能が使い易さに直結してきます。
いずれのレールにしても、1点だけ必ず注意したいのが『引き残し』問題です。
収納したものを取り出す・しまうといった行為が容易であることが引き出し収納の一番のメリットですが、レールによっては全ての部分が前方まで出てこないものもあります。
そうなると奥に収納しているものはどうしても出し入れがしづらくなってしまいます。
キッチンのレールを選ぶときには、この点は必ずチェックすることをお勧めします。
今回はキッチンで使われるスライドレールをメインにまとめましたが、その用途に応じてサイズや素材などもバリエーションが豊富にあります。
ご自宅の中でもいくつか引き出し収納があると思いますので、どのようなレールが使われているのか一度確認してみるのもスライドレールを知る第一歩になるのではないでしょうか。
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