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室内環境とその調整 感覚と知覚

2017.9.10

すべての生きものは生活をするうえで、常に何かを感じ、それを認識して行動しています。

現代における、人間の暮らしや文化にもその影響(というにはあまりに当然すぎて、その概念が前提とされることが忘れられがちですが)は多分にあり、住まいや生活空間にもその影響は多大です。

今回はこの「感覚」と「知覚」の分野で住まいの環境をつくるうえで重要な「視覚」「嗅覚」、そして「温熱感覚」について2回に分けて、お話していきましょう。

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感覚と知覚

感覚と知覚の概念は、心理学的には議論の多いところで、厳密には区別しにくい部分もあります。

一応区別をするとすれば、「目・耳といった感覚器が外界からの刺激を受け、それを脳に伝えるところまでは感覚」であり、「その感覚をそれまでの経験や、その時点での状態に照らし合わせて認知する、もしくは認識する過程(同じ感覚によって異なった認識が生ずる可能性もあります)が知覚」であるとされています。

人間にはいわゆる五感(視・聴・嗅・味・触)があって、それによって外界からの状態を的確に判断できる能力があります。

五感は味覚を除けば、何らかのかたちで空間にたいしての知覚に関連を持ちますが、とりわけ「視覚」の持つ役割は大きいものです。

 

視覚

視覚は目を通して生ずるものですが、その構造は基本的にカメラに似ています。

しかし、カメラとは比べものにならないほど精巧な機構を持っており、両目によって見える視野の範囲は左右約200度、上下約130度に及びます。

色の認識によって、この範囲は狭くなるのですが、目や首を動かすことによって、短時間で全ての方向を認識することが可能です。

いわゆる「視力」はどれくらいまでの細かい対象を区別できるか、という尺度であり、対象の色・形・明るさなどによって変化します。

人間が知覚できる範囲を「可視域」といいます。

例えば、人の目が明るいところから暗いところへ異動した際に完全に順応するのには(個人差がありますが)約30分とされています。

この順応性を「可視域の順応」といいますが、この順応に「それまでの経験や、その時点での状態に照らし合わせて認知する、もしくは認識する過程である知覚」が影響しています。

つまり、暗いところに入って、視界が良くない段階では触ったものやはっきりと認識していないモノを経験則から判断しているということです。

物理的な事実と異なった知覚をいわゆる「錯覚」というわけですが、専門的には「錯視」と呼んでいます。

この錯視は心理学的な要素も大きく働いており、ロールシャッハテストやだまし絵などもその手法を用いたもののひとつです。

人間は眼で見ることによって距離の違いを感じ取り、空間の奥行や幅などを感じ取りますが、これを利用しているのが錯視です。

例えば「帽子を被ると背が高く見える(=視点のポイントが高くなる)」といったことは洋服のコーディネートの常套手段ですが、こうしたことは「空間の奥側に背の高い観葉植物などを置くと視点が空間の奥側に向き、部屋が広く見える」「家具を同じ方向に揃えると奥行き感が増す」といったインテリアコーディネートにも一役買っていたりします。

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聴覚

聴覚器官である耳は、音による情報だけでなく、自分の身体がどういう状態にあるかを知るためにも必要な機関です。

耳は外部から鼓膜までの外耳と、鼓膜までの振動を増幅して伝える中耳、伝えられた振動を的確に脳に伝えるための内耳とに分けられます。

中耳は鼓膜の振動を伝えるだけでなく、過大な音に対して内耳を保護するようなクッションの役目も果たしています。

聴覚も視覚と同じようにある範囲の周波数(1秒間に振動する回数=Hz・ヘルツ)の振動だけを音として認識します。

また、耳の位置や耳介の形状からもわかるように、前方に対して高い感度を持っており、特に高周波の音に対しては現状の耳の位置が、効果が顕著とされています。

 

音の知覚過程はかなり複雑で、単純に大きさのレベルだけでは片付けられない側面があります。

心を和ませる音楽も、時としては騒音と受け取られる時もあります。

逆に適当な雑音が他のちょっとした気になる音を気づかせない(うるさい、と知覚しない)ことも。

一口に騒音と言っても連続的にある一定のレベルの音が続く工場周辺などのそれなどや、飛行場周辺のように断続的に非常に大きな音を知覚する場合とがありますが、一般に「人が聞こうとしている音は騒音ではない」とされています。

音楽ホール・劇場・映画館などは「聞こうとする音をいかに聞こえやすくするか」という工夫がされます。

また、我々の暮らしや住まいにおけるものではTVやオーディオのスピーカーの位置や性能の進歩・工夫などはそうした観点からの賜物ではありますし、川のせせらぎや波の音、小鳥のさえずりなどは「聞こうとしなくても聞こえてきて、さらにそれを心地よく感じる=自然と聞こうとしている」ことからこうした環境音をBGMとして聞いている人や企業も多くあります。

この場合、BGMも立派なインテリアであり、感覚が生活にどれだけ寄与し、影響を与えているかがよくわかります。

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関連リンク:

https://www.kagura.co.jp/point/01.html

https://www.kagura.co.jp/point/03.html

 

参考文献:彰国社刊 小原二朗・加藤力・安藤正雄編「インテリアの計画と設計・第二版」

     彰国社刊 壁装材料協会発行「インテリア学辞典」

 


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