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木の家具と暮らす ~私たちのKAGURA STYLE~ #04

2022.2.24

 

 

建築家 × 家具蔵 コラボレーション実例紹介 【その1・後半】


 

 

建築家の作る空間。

それは閃きやセンスだけではなく、膨大に積み重ねられた個人的な体験や、ノウハウに裏付けられた手作りの作業によって生まれるものづくりに他なりません。

ここでは、それと同様に「丁寧な手作業による上質なものづくり」を標榜し、行っている私ども家具蔵の仕事が建築家の感性や手掛けた空間と響き合い、見事に形となった個性豊かなインテリア実例をご紹介します。

 

泉幸甫建築研究所・泉 幸甫氏


 

 

泉幸甫建築研究所代表・日本大学の教授であり工学博士の泉 幸甫(いずみ こうすけ)さん

1947年熊本生まれで、NPO法人「家づくりの会」の設立に係った中心メンバーでもあります。

会が主催する「家づくり学校」の校長も勤め、東京建築賞最優秀賞、日本建築学会作品選奨など受賞歴も多数な国内を代表する建築家の一人です。

 

素材への洞察と造形センスから生まれる唯一無二の空間 (山本邸/東京都)


 

 

山本邸は学生が行き交うバス通りからわずか数歩路地を入った場所に位置しています。

小さな木戸をくぐると、しっとりと影のある玄関庭に迎えられます。

静謐な空気が降り注ぐような石と漆喰の階段ホールに導かれ、2階の玄関へ。

格子戸を開けると目の前に拡がるのは端正でありながらも、全ての造形にしっかりとした背景と奥行が感じられる、なんとも心地良い空間でした。

明るすぎず、広すぎず、高すぎない。

各部の仕上げ材料には人の五感に自然と馴染むものが吟味されていて、全ての塩梅が図られたその妙味は図面や写真では伝わりにくい種類のものかも知れません。

施主は以前より心に決めていた泉氏に「家づくりの会」を通して設計を依頼し竣工しました。

素材と空間自体の持つ力に影響されたのか、暮らし始めてから住まう二人の美意識も変化していったといいます。

 

施主との出会いで広がる空間提案


 

 

一方で、泉氏も設計作業とその後のお付き合いを通して興味深い様々なものに出会うきっかけとなったようです。

独特のデザインが目を引く階段ホールの照明のように、その由来となるエピソードがある素敵なものが空間をより引き立ててくれることもあります。

撮影時、壁面を飾る素晴らしい絵画や窓際に置かれた懐かしい佇まいの鳥かごのオルゴールに目を輝かせ、姉妹のお話に耳を傾けていらした泉さんのお姿は印象的なものでした。

建築家と施主は互いに影響を与えながら、その土地、風土、施主の人生そのものを反映したような、唯一無二の空間を生み出し、熟成させていくのかも知れません。

まさにそのような創造の現場を目の当にした貴重な取材となりました。

 

ダイニングの「テーブル ヴィンテージ」はクルミ材。

脚の絞り形状は天板とのバランスをみて泉氏が直接指示をしたものです。

「アームチェア ヴィンテージ」、「Vチェア」(共にウォールナット材)の美しい削り出しの曲線が、直線で構成され

た端正な空間に表情を添えています。

 

和室は茶室の八畳広間として利用できるように動線を熟考し、床、水屋などを配置しています。

コウゾ100%の障子紙、柿渋で仕上げた壁など素材へのこだわりも泉氏流。

「五風軒」という茶室の名称は、恵みを意味する、五風十雨という漢語が由来です。

木の幹の形状を洗練された意匠として残した「耳付き」の座卓はチェリー材で製作しました。

 

リビングは床材と同材のウォールナット材を使用。

ソファは赤い革を使用してコントラストを出すことで、リビングが引きしまった空間になっています。

 

階段ホール全景。玄関引き戸の脇に、茶庭に置かれるつくばいを配置しています。

この階段を露地と見立て、特別な空間へ向かう「結界」にするという演出でもあります。

 

水回り、寝室へと向かう廊下の突き当たりには、天窓からの光がお気に入りのアートを照らす飾り棚。

 

玄関ホールからリビングに入る格子の引き戸と隣接する茶室の欄間。整理された構造材によってその対比が際立ちます。

 

取材協力:家づくりの会 / 田園都市建築家の会

 

 


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