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人間工学と自動車の関係から見る家具

2017.12.25

このコラムでは何回かに分けて人間工学をテーマに、主に家具との関わりについてお話をご紹介しています。

少し観点を変えて「衣服」「靴」とご紹介してきましたが、今回はそのお話に続き「自動車」にスポットを当ててみます。

車離れが進んでいると言われている昨今ですが、まだまだ運転をする機会のある方も非常に多いのではないでしょうか。

その自動車を開発するにあたり、人間工学との関係はとても密接であり、乗っている人の快適さを評価する手段として自動車の開発研究をする場に定着しています。

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自動車と人間工学の関係性

自動車においての人間工学の範囲は、人間の作業能力との関係だけでなく、人体の形状、寸法、および精神的な特性との関係などの広い範囲にわたり、さらには室内レイアウトの検討や運転装置機器の操作性・運転者を含めた乗員の乗心地・安全性・操縦性に至るまでその技術と研究が活かされています。

そして、この人間工学を自動車の設計に適用するためにはまず人体について知らなければなりません。

当コラムでも人体の骨格や作業域についてお話してきましたが、それらのことを知ったうえで自動車の設計に臨む必要があります。

特に、自動車というのは人の感性を扱うものですから、人が動くときに発する生体の微弱な電気信号を測定するような豊富なデータを基にしなければならないのです。

例えば、自動車メーカーのマツダが上記のような測定したデータを初めて実際の車に採用したのが、あのロータリーエンジンで有名な「RX-8」です。

スポーツカーでは珍しい観音扉を採用しているため、ドアの持ち手をどのような構造にしたら開けやすくなるかを徹底して分析しています。

この人間工学を取りいれた「RX-8」がターニングポイントとなり、マツダは人間工学を応用した車づくりが進化していきました。

2012年の「CX-5」からは「人間の関節はどこまで動かせるのか」「操作しやすい姿勢とはどういうものか」という視点を徹底的に反映させて設計されています。

そういったことからマツダの車は運転しやすい、身体が反応しやすいとの評判も高いメーカーとなっています。

 

室内レイアウトと人間工学

自動車そのものの設計はもちろんですが、このような人間工学を最も反映させているのが室内レイアウトです。

自動車の室内で最も大事なことは、ドライバーの快適な運転性と、同乗する人を含めた居住性です。

これは標準的な運転姿勢をベースにして最適な姿勢を求めたうえで、その姿勢で様々な体型の人間でもカバーできるように全体のレイアウトを決めていくことになります。

また、前後席の配分やレイアウトも同様に決めていくことも必要です。

特に室内の装置類を簡単に操作できるか、走行中に使用するステアリングやペダル類、ライト、ワイパー系などのスイッチ類が使いやすいかどうかが重要になってきます。

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シートへの応用

シートはドライバーの位置や姿勢を決めているものであり、かつ同乗している人が快適でなければなりません。

シートの寸法については、そこに座る人の寸法により最適なものが異なるためその都度調整できるのが理想です。

シートをレイアウトするときは、床の凹凸や天井、ドア内張りなどの制約の中でデザイン上の要求を満たしながら、必要寸法を得る工夫をしなければなりません。

当然、商品ですから品質感や感触なども重要なポイントになります。

人間の官能特性とシート構成部品の物理量との関係をきちんとおさえる技術力=織物や樹脂などに関する知識や技術も必要です。

また、ここでは重要な点として「最終安定姿勢」と「体圧分布」があります。

シートに着座したときの人体とシートの接触形状を最終安定姿勢と呼びます。

この最終安定姿勢で重要な点は腰椎支持位置や強さです。

これが適切な数値で設計されないと座り心地に影響してきます。

体圧分布は、お尻や背中のどの部分にどのぐらい圧力が加わるかを表したものであり、シートの掛け心地を評価する大事な特性です。

評価のポイントは、人体の圧力耐性の弱いところに無理な圧力が加わっていないか、逆に圧力耐性の高い部位に必要な圧力が加わっているかなどを見る必要があり、シートクッション側では座骨結節部で体重を支え、大腿部 側面や下面、およびシートバックの肩甲骨部分などに余分な負担が加わっていないことが重要です。

この体圧分布の測定は、圧力センサーの著しい進歩とデータ処理技術の進歩により、近年、電気的な方法が普及しており、今後はますます進歩していくといわれています。

 

そして家具

ここまで読み進めて頂いた方は当然、家具、特に椅子との共通点を感じたことと思います。

車に乗る、運転するという作業はある意味とても疲れることであり、その疲れを軽減するためのものがシートや空間レイアウトへの工夫です。

一方で、室内で椅子に座るという行為においては食事をしたり、寛いだり、または作業をするなどその目的は多岐に渡りますが、やはり求められるのは身体への負担が少ないものであり、姿勢をしっかり支えてくれると同時に開放的にもしてくれるものです。

それは無垢材を使って家具蔵が実現したい椅子のかたち。

最先端の技術の粋を集めて快適性を追求する自動車と、昔ながらの工法を採り入れながら快適な暮らしを第一とする家具蔵の家具。

こうして比較してみると一見、共通したものが無いように見える両者にも不思議な共通点が見いだせますね。

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参考文献:

実教出版株式会社 小原二朗著書「暮らしの中の人間工学」

講談社 小原二朗著書「人間工学からの発想-クオリティ・ライフの探究」

 

関連リンク

https://www.kagura.co.jp/kagu/good_design/

https://www.kagura.co.jp/chair/

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