チェリー材の色の変化の秘密を知る
2021.4.24
「チェリー材」。
無垢材家具を探している、あるいは愛用している人には耳馴染みの良い素材でしょう。
いわゆる「桜の木」なのですが、日本人にたいへん馴染みがある、毎年春に淡いピンクの花を咲かせて私たちの心を豊かにしてくれる、あのソメイヨシノとはちょっと異なる木です。
私たちが日常よく目にするソメイヨシノは観賞用に交配された桜のため家具材には適しておらず、同じ桜の家具材としてのチェリー材とは主に北米の桜の木「アメリカンブラックチェリー」を指します。
その赤黒い大きな実は日本のスーパーでもよく見かけます。
アメリカンブラックチェリーは高級家具材として世界中で長年人気を博してきた材です。
その理由のひとつに、チェリー材の持つ色の変化の魅力があります。
今回はそんなチェリー材の「色の変化の魅力」についてお話ししていきます。
アメリカンブラックチェリーとは
アメリカンブラックチェリーは他の広葉樹と比較した際にその安定性が優れているとされ、また加工性においても有用であることから、高級材として古くから家具材に利用されてきました。
日本では山桜(ヤマザクラ)などがサクラ材として使われていますが、アメリカンブラックチェリーは北米産のサクラの樹では最も有名な樹です。
主に北米の北東部に生育する樹で、特に米国ペンシルバニア州に広がる広大な天然森林に多くみられます。
幹はまっすぐに伸び、高さは15~30メートルほどにもなります。
優美な趣の日本のソメイヨシノとは異なり、森の中で堂々とした雰囲気を漂わせています。
チェリーが属する広葉樹は道管の分布により主に環孔材と散孔材に分けられますが、チェリー材は養分を運ぶ導管が散らばっている散孔材に近く、木肌はたいへん滑らかです。
そのすべすべした触り心地も、ファンの多い理由のひとつとして挙げられます。
木目は控えめでゆらゆらとした優しい表情であり、空間に温かみを加え、見る人に癒しを与えてくれます。
チェリー材の色の変化
無着色の無垢材は時間の経過とともに色合いが変化していく特徴があります。
この変化を「経年変化」と言います。
経年変化は、主に紫外線の影響により木材中の成分が変化し、別の成分に変わるために生じる現象です。
光による色の変化は、樹種によって異なり、色が濃くなるものもあれば反対に明るくなっていくものもあります。
人間と同じで時間が経つごとに見た目に変化が現れ、熟成していく姿は無着色の無垢材家具を使う一番の楽しみと言っても過言ではありません。
数ある無垢材の中でも一番変化のスピードが速く、変化の度合いが大きいと言われているのがチェリー材です。
製材したての木肌は、ほんのりピンクがかった薄茶色。
そこから早いものでは数か月程度で少しずつ色づき始め、時間の経過とともにツヤを帯びた飴色とも言うべき紅褐色へと変化していきます。
3~5年も経つと、元の色がわからなくなるくらいに変化をしていきます。
最初は初々しく、やさしいフレッシュな色合いから味わい深い表情と色味へ変化する様を身近で感じながら使う感覚は、自分でアンティーク家具を育てていくような喜びを味わうことができます。
こういった経験は天然木に色を塗った着色家具や、化粧シート、あるいは突板を圧着し加工した工業製品では味わえないことであり、無垢材家具と一緒に暮らす方人のみが味わうことのできる楽しみだとも言えます。
また、無垢材の家具は表面に摩擦が加わるほどに、自然なツヤも生まれてきます。
チェアのアーム部分やテーブルの良く使用する場所など、日々の利用と共に美しいツヤがでてくることは、無垢材が愛着を持たれる理由の一つです。
こういったエイジングともいえる色合いの変化は、表面を0.2~3ミリ削ることでまた元の色に戻すことができます。
いくつか付いた傷も元通りになり、以前自宅に来た際と同じ色合いに姿を変えた家具は、まるでまた新しい家具を購入したかのような新鮮さを与えてくれます。
エイジングされたまま使い続けるもよし、削り直しをして製材したての元の色に戻し気分を入れ替えて使うもよし、私たちを飽きさせることなく楽しませてくれるのです。
チェリー材の色合いを活かした空間作り
このように色合いの変化が魅力のチェリー材。
現在の日本の住宅事情にもよく馴染ます。
日本の住宅は欧米と比べ狭いため、少しでも広々感じられるよう、壁や天井に白系の色を用いることが多くみられます。
そのため、同じような白い材やガラスなど無機質な材の家具を置いた場合、冷たい印象になる場合も。
チェリー材なら壁や天井とのコントラストがはっきりし、木のぬくもりを感じる温かい空間を作ることができます。
いわゆる興奮色である赤の色素を持つチェリー材はダイニングに使えば食欲が増します。
また、元気が出る色とされる赤。
テレビボードやサイドボードに用いて遠くから毎日眺めると元気がもらえるかもしれませんね。
赤の補色である緑はお互いを引き立たせる関係の色です。
チェリー材の家具のある空間に観葉植物の緑を取り入れることで、植物はより活き活きと見え、家具も存在感が増し明るい空間が完成します。
樹の色と葉の色が入れば、毎日自宅で森の中にいるかのような自然の癒しを存分に味わうことができます。
出来たての明るい若くフレッシュな色合いの時と色合いが深まっていったその後で、気分を変えて使うことができるのも魅力です。
年数を経て使うごとにどんどん良くなっていくチェリー材。
道具でありながら自分と一緒に年を重ねていくようなその姿に、人生のパートナーのような愛着が湧いてきます。
チェリー材のある生活を取り入れられてみてはいかがでしょうか。
家具蔵の無垢材チェリーでつくった無垢材家具のある暮らしの事例はこちらから
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