タモ材の家具がもたらす、木の家具を使う喜び
2020.2.29
材質は硬くて強く、力を加えても折れずに「たわむ」木の性質から、その名が付いたように、強さとしなやかさを兼ね備え、加工性にも優れた銘木「タモ」。
木目は広葉樹の中でも通直(真っすぐ)であることは指折りで、その表情も非常にはっきりとしています。
いわゆる「欠点」の少ない材として、古くから家具だけではなく、建築物や楽器、あるいはホッケーのスティックのような運動器具などにも、幅広く使われてきました。
今回はそんな「タモ」についてご紹介していきましょう。
タモとは
日本、中国、ロシアがおもな原産地で広葉樹の中でも非常に大きく成長し、最大クラスのものでは高さが30m、幹の太さは80~100cmにもなります。
木目は、心材部分のかなり深いところまで美しく流れているため、根元付近から先端近い部分まで、均質な木目を取ることができます。
また、広葉樹の中ではもっともまっすぐに生長し、枝下が長く、木口がほぼ正円なことから、その材を無駄なく使うことができるのも魅力のひとつです。
原木によってはかなり大きな材が取れるため、その独特の木味を1枚の板の中で余すことなく楽しむことができます。
木目の美しさに加え、1本の木でも心材と辺材では明確に色味が分かれているのも、この木の大きな特徴です。
心材部分のくすんだ褐色~辺材部分の淡い黄白色にかけての色味の変化が、明瞭な年輪の木目と重なり、優しい雰囲気の中にも、凛とした表情を持つ家具に仕上げることができるのです。
その表情は、板目は非常に力強く、柾目は非常に繊細な木目をしており、年輪幅が約1mm〜2mmで、糸のように狭い柾目が現れることから「糸柾」「毛柾」と呼ばれています。
また、タモの中でも、ごくまれに杢(もく)と呼ばれる変わった模様が現れたものがあります。
杢はとても個性的で、希少価値もあるもので、杢の模様には、非常に豊富な種類があり、「玉杢」とよばれる、木にできるコブの様なものや、「縮み杢」と呼ばれる、木が自然の外圧によってねじれることで杢がシワになるような状態のものなどがあります。
「タモ」と言った場合、一般的には、このヤチダモと、アオダモ、トネリコの3種のことを示しています。
地下奥深くに根を張り、天上に向かって真っ直ぐ生長するヤチダモ(以下タモ)は崇高さと威厳に満ち溢れた見事な姿で人間を見守ってくれています。
ケヤキやクスノキなどの大木も見る者を圧倒させる威厳さを持っていますが、タモの場合はそれにプラスして品位と優しさを醸し出し、観音像のような包容力すら感じ取れます。
東北地方にはタモを御神木として祭っている所があり、いわゆる「子育ての神」としての信仰が根強く残っていることも有名です。
タモと人との関わり
北海道のアイヌ民族の神話の中にタモがよく出てきますが、タモのカムイ(神)は女性として登場します。
古代よりタモの活用で最も重要なのが丸太をくりぬいてつくる丸木舟でしたが、タモ以外にセンノキやカツラでも作っていましたが、タモでつくるものが最高級でした。
この丸木舟で川を下り、海に出て他部族や和人と交易をしてアイヌ人はその文化を発展させていったのです。
神話に出てくるタモのカムイは、いわゆる「焼きもち妬き」でどこか偏屈さを持っています。
その神話では、恋敵である楚々とした美しいカツラに嫉妬して女の戦いを繰り広げましたが、結局失恋して負けてしまいました。
これはタモの性質についてかなり的を得ている話で、決して媚びたり、カワイコぶったりしないストレートな感情の持ち主として語られています。
タモの立ち姿や材の表情に、凛とした力強さを感じるのは神話で語られている性格そのものなのです。
立ち姿からして、美人の誉れ高いカツラに引けを取らない「美女」なのですが、男性好みというより女性から好感や憧れを持たれるタイプなのでしょう。
東北地方の乳授け信仰も女性同士ならではの連帯感と安心感から生まれたものだと思います。
人間の生活や自然環境を常に見守ってくれている偉大なタモであっても、時には怒り、傷つきながら現状の崇高さを確
立した事を思うと、我々人間の小ささが今更ながら実感させられます。
タモの重要性
材としてばかりではなく樹の生長過程そのものが自然環境を保持してくれる事にあります。
湿った土壌は場合によって土砂崩れの危険性を孕んでいますが、タモはそうした地の地下奥深くに幅広い根を張り、斜面の土砂崩れを防いでくれています。
タモはナラやブナなどのように群生はしないで、川などに沿った位置に配列して生長しているので、一層そうした災害を防いでいると言えるでしょう。
凛とした立ち姿をしのばせる木目が空間を引き締めるタモ。
ダイニングに根を生やしたかのような堂々とした佇まいが、確固たる存在感を示しています。
全ての広葉樹の中でも際立った存在感を誇るタモは、「白木の女王」とも讃えられ、材となってもその神秘的な美しさは変わらず、どこか神秘的な力さえ感じさせる独特の木肌は、自然に触れる喜びや安心感をも与えてくれます。
この様に、木は私たちの暮らしに必要不可欠な存在であると同時に、心の拠り所としての象徴ともなっていきます。
私たちが暮らしの中で接するものに木を使うことは、勿論木の持つ特性や効能もさることながら、古くから日本人の思想に根付いている木に対する関わりが、暮らしに心の安らぎをもたらしてくれる存在であることは間違いの無いことなのではないのでしょうか。
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