和家具と家具蔵の収納家具の「良い」関係
2019.10.19
和家具の人気
生活スタイルも多様化し、インテリアをはじめとして家具選びにおいても、その在り方は多岐に渡っています。
そのなかで確実に増えていること。
それは、
「時代に流されない普遍性を持った家具が欲しい」
「大量生産でなく、しっかりと作り込んだ自分だけの家具が欲しい」
といったことです。
この傾向をもう少し分析すると、ある一つの方向性に辿り着きます。
それは、日本伝統の技を活かした和テイストの家具。
「伝統的な和家具を暮らしに取り入れたい」
「和風の家具を使ったモダンインテリアを楽しみたい」
暮らしのスタイルが変わって、いつの間にか和家具を見る機会が減ってしまいましたが、それでもやっぱり和家具好きという人はけっこう多いように思えます。
しかしながら、本格的な和風の家具を取り入れようと思っても、どれを選んでいいかわからないという声が多いのも事実です。
和家具は、耳慣れない名前が多いうえ、アンティークから現代物の家具まで含めると、かなり種類が幅広いので、その中から1つを選ぶのはとても大変です。
和家具の種類や歴史、技といった基本知識を知ると、現在様々なメーカーで製作されている数多くの家具から、本物を見つけ出す「目利き」が備わってきます。
和家具の歴史
元来日本の暮らしは、家具らしい家具の無い「ノーファニチャー」の生活であり、庶民に家具といわれるものが広まったのは、江戸時代、もしくは大正時代に婚礼家具が一般的になってからと思われます。
和家具は、箪笥や座卓、文机など、日本の伝統的な家具を指します。
和家具という言葉は、明治から大正期に生まれたもので、さほど遠い昔のものではありません。
当時、西洋から入ってきた家具と、日本に従来からある家具を区別するために使われ始めました。
和家具は日本の住宅や床座の生活様式に適した形に作られていて、直線的でコンパクトなものが多く、西洋家具のように脚がありません。
そこで純粋な和家具ではなく「和風の家具」というと、和家具の意匠をベースとし、より広い意味の家具を指すことが多くなります。
例えば、脚付きの箪笥や和の意匠を取り入れたダイニングテーブルなどが当て嵌まります。
和家具の家具づくりの基礎となっているのは、日本に江戸時代から伝わる水屋家具の製作技法です。
家具職人の仕事は家を建てる大工が行っていました。
昔の大工が家を建てる為に使った日本の伝統的な技法が、家具蔵の家具づくりにも脈々と受け継がれています。
京都の清水寺に代表される木造建築には釘を一切使わなくても、木造りだけで丈夫な建物が存在しています。
伝統に則った家具づくりにおいては釘を使用する事は一切ありません。
これが和家具をはじめとする家具職人の技の証なのです。
伝統を継承する家具は完成までに多くの時間を必要とします。
職人がひとつひとつ丁寧に製作することで、より長く使い続けることのできる家具となるのです。
家具を表す「言葉」
家具を表す言葉は時代によって変化してきました。
奈良時代には資財、雑物(ぞうぶつ)、鋪設(ほせつ)物、装束(しょうぞく)、平安時代には調度、装束、
中世には具足(ぐそく)、器財(きざい)が、そして近世には道具、屋財(やざい)、家財、家飾具(かしょくぐ)といったものそれにあたります。
また、特に机や棚などは「指物(さしもの)」とも呼ばれていました。
しかしいずれにしても現在の「家具」のように家具全体を表す言葉でないのは、そうした概念自体が日本では育っていなかった為だと思われます。
建具や畳、また膳(ぜん)、椀(わん)などを始め、明治になってもまだ、鍋(なべ)、釜(かま)から衣服や指輪などまで、
つまり家の中にあるすべてを家具とよんでいる例もあるくらいです。
箪笥の変遷
その中でも特に和家具らしい存在感を出してきたのが、水屋箪笥や桐箪笥ではないでしょうか。
水屋箪笥は、江戸時代ごろから台所で使われていた和家具。
かつて冷蔵庫がなかった時代には、食材も食器もまとめて水屋箪笥に収納していました。
その為、水屋箪笥の引き戸は、木製の板戸のものだけでなく、
風通しを良くするために金網が張られたものや、すのこ状の造りのものもあります。
この水屋箪笥は、現在においてもキッチンやダイニングに置く食器棚として人気があります。
また、テレビ台やサイドボードに使えるサイズにリメイクした水屋箪笥も人気です。
桐箪笥は、江戸時代後期から明治以降に伝わった西洋文化が生んだともいえるでしょう。
ただ、日本で生まれた桐箪笥は、やはり日本の生活様式に密着していて、日本的な特徴を持ち合わせています。
その特徴の一つに、昔の桐箪笥は棹を通して持ち運べるように、棒通しという金具が横側についていました。
つまり、移動して、持ち運べるようになっていたのです。
一般に、これは火事の時に持ち出して逃げるためと言われていますが、それよりも大きな理由があると思われます。
それは、日本人の生活様式とものの考え方から来ています。
桐箪笥の根本の考えは、風呂敷の延長にあります。
法事や、冠婚葬祭は、家で行われることが多かったですが、来客が大勢の際には、襖を外して部屋の仕切りをなくして、大きな部屋として使う。
そしていらない物は、押入れに片付ける。
そんな時、箪笥もどけるか移動することも行われたことでしょう。
そんな時、箪笥は軽くなくてはいけませんでした。
軽い桐たんすは、非常に便利であったのです。
今に生きる私たちも風土や住まい方に合った、利便性と丈夫さを兼ね備えた家具を望んでいる方は多いでしょう。
家具蔵の家具づくりは、日本人が築き上げた英知を現代に継承し、今の生活に見合ったものを目指しています。
しかし、どうして現代に生きる私たちが和家具に古を感じたり、見ているだけで落ち着くのでしょうか?
「和」という言葉には"波風が立たず平穏なさま" という意味があります。
日本古来から使われる自然素材や光の取り入れ方、床座の暮らし方など、和の持つ魅力の要素は日本特有のものが多くあります。
古来は住まう場所を造るとき、その土地で手に入れる事の出来る材料を利用していました。
古くから使われている、木材、井草、籐、石材、土などは、私たちに馴染みのある自然素材です。
自然素材は、種類ごとに特有の感触と美しさを持っており、そばに身をおくと現代生活の中で生じるストレスを忘れさせ、和やかな気持ちにさせてくれます。
和の空間における自然の持つ温もりこそが、変わらぬ魅力と愛着を生み出しているのです。
それは家具蔵の無垢材家具にも通ずるものであるのです。
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