チェリーの特徴的な表情とは
2019.6.14
アメリカンブラックチェリー。
家具材としては以前より定番的な人気があり、そのうえで近年その価値と人気はうなぎのぼり、という銘木です。
その名の通り「ブラックチェリー=黒いサクランボの実」が生る木として有名ですが、それ以上に家具材をはじめとした生活用材としても、その素材の特性、滑らかな肌触りや艶の美しさが洋の東西を問わず人々を魅了してきました。
そんなチェリーの特徴や魅力をご紹介していきましょう。
チェリーの産地と人との歴史
「アメリカン…」の名が示すように、おもな産地は、アメリカ東部全域(ペンシルバニア、バージニア、ウエストバージニア、ニューヨークの各州)に及びます。
現在、北米大陸には約30品種のサクラ類がありますが、その中でも絶大な人気を誇り、現代の最高の木材のひとつとして君臨しているのが、アメリカンブラックチェリーなのです。
この種は、日本のヤマザクラなどと同じくバラ科に属しています。
日本でも桜は国民的な人気を誇る春の風物詩であり、様々な使われ方をしてきました。
同じくこのチェリー材も、家具材のほかにも最高のパイプ材として世界の愛好家から絶賛されているほか、意外なところでは咳止めの薬としても愛用されてきた経緯があります。
また、木片は燻製の時にチップとして使うと、まろやかな味に仕上げることができます。
家具の歴史のなかで燦然と輝き、その思想やデザインが後世にも大きな影響を与えた「シェーカー家具」。
18世紀から19世紀にかけて、ニューイングランド地方(アメリカ合衆国の北東部6州を合わせた地方の呼称)でマザー・アン・リーをリーダーとするシェーカー教徒によって創られたものです。
シェーカー家具は余計な装飾を排除し、直線的で機能的な美しいフォルムはチェアやテーブルなどが有名で根強いファンも多いものです。
そんなシェーカー家具の職人たちも好んでアメリカンブラックチェリーを使用していました。
職人たちは、時間と共に深くなるその優美な色調から、世界的な優良材であるマホガニーに匹敵するとして「ニューイングランドマホガニー」と命名していたという史実も残っています。
チェリーの特徴
製材したて、家具となって自分の手元に届いた時は淡い桃色をしているチェリー。
その優しい表情は年月の経過の中で紫外線などの影響により、最終的には濃い赤褐色に変わっていきます。
その「劇的」ともいえる変化は、時を重ねるごとに表情を変えるという無着色で仕上げた際の無垢材ならではの魅力を存分に堪能できます。
最初と数年後、そしてその後。
家具となってからもまた新たな表情と歩みを見せてくれることがその大きな特徴であり、特性です。
そしてこの材は、緻密で手触りの良い木肌が気品さを感じさせる一方、非常に表情豊かで野性味溢れるたくさんの「生きた痕跡」を残します。
例えば小さな褐色の斑点や筋が見られますが、それは一般的に「ガムポケット」や「ビスフレックス」と言い、樹液が硬質化して木の性質の一部になった現象です。
また、虫や鳥が、木の表面に漏れ出て集まった樹液を吸うためにつけたキズ痕を、樹木が長い成長過程の間依に表皮で巻きこみ、自己再生した跡である「バークポケット」と呼ばれる箇所もよく見受けられます。
「さざなみ紋(別名:リップルマーク)」と呼ばれる湖の湖面の漣を見ているような立体的な表情は、生長の過程や気候の変化で起こる縮みにより見られる表情で、受ける光の角度によってキラキラと立体的に輝き、存在感を放ちます。
これらの木の表情は「キャラクターマーク」とも呼ばれ、自然素材の証であり、流通上は欠点とはなりません。
むしろ、それは木が長い年月をかけどのような環境で生きてきたかを想像させる表情。
使うたびに、眺めるたびに木が私たちに自分の物語を語りかけてきてくれているようです。
チェリー材の家具のコーディネートは
そんなチェリー材の家具を空間のなかでコーディネートするならどのようにするのが良いのか?
家具蔵でもよく耳にする質問です。
答えはずばり「何にでも合う」と言って良いでしょう。
そもそも無着色の無垢材は様々な色素の集まりの結果として、今見ている色味に見えています。
増してその色味は段々と変化するもの。
つまり何色でもなく、何色でもある。
そんな特徴はチェリー材でもさらに顕著です。
その観点から行くとどんな空間にもしっかりと彩りと自然の風合いを与えてくれるのがチェリー材なのです。
その色合いはやさしく、暖かな雰囲気を空間にもたらし、そのうえで主張しすぎることなく、どんな空間にも美しく調和します。
光を程よく抑える木肌は、人とモノとの間に見えない架け橋を渡し、安らぎに満ちた時間をもたらすのです。
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