ウォールナットやチェリーはどこの国の木か?
2023.12.24
その家具の「元の木」はどこから来たか?
動物でも植物でも、世の中で生を受けて育つものはすべて「どのような場所で生まれ育ったか?」というバックボーンがあります。
私ども家具蔵では常時8樹種、一枚板天板のみ取り扱いのある樹種を含めると30前後の樹種を取り扱っています。
世界中から選りすぐった銘木や大木を家具材としているわけですが、その樹種ごとに「どこの国や地域に分布している木なのか」という違いはあるわけです。
実際にお客様から「この○○という木はどこの国のものですか?」というご質問をいただくことがあります。
その木がどこから来たのか、そしてどのような経緯で家具材になったのかを知ると、インテリア性に留まらない「木の選び方」が見えてくるかもしれません。
ウォールナットとチェリーは北米産であることが多い
まず、今回のタイトルでもある「ウォールナット」と「チェリー」。
これがどこの国や地域で採れたものかというと、端的に言えば「北米」です。
家具材に使用されるのはいわゆる広葉樹材がその特性からも多く、それらは一般にアメリカやカナダといった北米産のものが高い支持とニーズを誇ります。
それは樹種の素材としての優秀性もさることながら、この地域に質の高い広大な広葉樹林が存在することと、それらがしっかりとした管理のもとに生育されていることに由来します。
アメリカ・カナダともに林業は一大産業であり、国の主導のもと伐採と植林をバランス良く行っており、その結果乱伐による枯渇の危機も無く、良材が提供されています。
そのことがウォールナット材やチェリー材の高い人気を下支えしているといって良いでしょう。
これはオークやホワイトアッシュ、ハードメープルといった北米産材においても同様のことが言えます。
それらをふまえて、家具蔵でも取り扱う人気樹種の「素性」を見ていきましょう。
ウォールナット
ウォールナットはつまるところクルミの木の一種であり、その亜種は200以上に及ぶと言われています。
イングリッシュウォールナット、ペルシャンウォールナット、あるいは人為的な配合によって生まれた超高級材となるクラロウォールナットなどもあるなかで北米産のアメリカンブラックウォールナットは数あるウォールナットの中でも最高峰ともいわれます。
なお、さらにオレゴン州に分布されるオレゴンウォールナットはアメリカンブラックウォールナットの一種に属しながらも、特筆されるべき希少性と価値をもって語られる銘木です。
中世の時代からその加工性と美しさをもって数多の建築や名作家具の材料となってきたウォールナットは今もなおそのコーディネート性の高さも相まって世界中で高い人気を誇ります。
チェリー
チェリーはあくまで俗称で、正確にはアメリカンブラックチェリーという呼称です。
ウォールナット同様、古くから家具や建材など幅広い用途で世界中から愛されている樹種です。
樹皮が黒々としていることからブラックチェリーと呼ばれるようになったとされます(諸説あり)。
チェリーは日本語に訳すと「サクラ」ですが日本にはアメリカンブラックチェリーと同じ種類の桜の木はありません。
あえて言うなら「ヤマザクラ」がそれにあたりますが、私たちが街で愛でるソメイヨシノとは全く異なる花や実がつきます。
ちなみにソメイヨシノで作られた家具が欲しい、という人もいるでしょうがソメイヨシノは美しい花を観賞するために作られた品種であり、樹幹の中は空洞となるため家具つくりには不向きであると言われています。
劇的な経年変化、すべすべの肌触り、優れたコーディネート性などが魅力のチェリー材家具は私ども家具蔵でも創業以来の定番材として人気です。
ハードメープル
アメリカンブラックウォールナット、アメリカンブラックチェリーと共に北米3大銘木と呼ばれることもあるハードメープルはアメリカ東部やカナダに分布しており、カナダの国旗にはメープルの葉がデザインされているほどです。
メープルは日本語に訳すとカエデであり、美しい樹形や手のひらのような愛らしい葉は私たちもよく目にします。
尚、家具材に使用する国産のカエデ材は主にイタヤカエデを指します。
北米産のハードメープル(材)と国産のイタヤカエデ(材)を比較すると、後者の方がやや赤みが強い印象です。
ハードメープルは多方面で用途が広く、その結果、一枚板を製作できるような大木の入手がなかなか難しい現状があります。
「森の真珠」ともいわれるほど滑らかで白い木肌は空間を清潔感のある爽やかなものへと演出してくれます。
サペリ
ここ最近、アフリカ産の樹種が一枚板をはじめ大きな支持を得ています。
北半球産の樹種では見られないような独特の色合いや木目といった表情に魅了される人も多く、またその認知度やアフリカでの加工費・人件費の低さによって手に入れやすい価格帯であるのも理由の一つです。
特に世界三大銘木として名高いマホガニーと酷似しているサペリは特に高い人気を誇ります。
華やかでありながら落ち着きもあり、帯状の濃淡を持つ表情は装飾性も兼ね備えています。
安価で美しい、という好条件のサペリですが数年後には認知度も上がり、また、加工費や人件費が大きく上昇している可能性はあります。
現在の価格帯でサペリをはじめとしたアフリカ産材を手に入れることは今後困難になるかもしれません。
広葉樹が家具材に使用されることが多い理由は、じっくり時間を掛けて育つことで身が詰まり耐久性に富むことにあります。
硬く、丈夫で強く、揺れにも強いという点は長く使うことを求められる家具にはぴったりというわけです。
ただし、家具材になるような大きさの樹木になるには少なくとも60~80年は掛かると言われています。
あるいはもっと長い年月が掛かるものもあるでしょう。
日本を含めた世界中の各地で長い時間を過ごした木を、家具として我が家に迎えるということを考えると、ますます大切に使いたくなるというものです。
もしかしたらあなたの気に入った家具は、強い思い入れのある土地で育ったものかもしれません。
そのような背景から家具選びをしてみてもきっと面白いはずです。
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