テーブルに見る暮らしの変化と家族の在り方とは
2022.9.23
目次
テーブルは暮らしの必需品である
家具は私たちの暮らしに欠かすことのできない生活ツールであり、その中のひとつにテーブルがあります。
家具の代表格といえば「テーブル」「椅子(ダイニングチェア)」「ソファ」「ベッド」「キャビネットなどの収納家具」ですが、この中のどれか、あるいは複数を使用していない・持っていないという人もいるはずです。
ですが、どのようなスタイルのものであれ「家にテーブルが無い」という人はあまりいないのでないでしょうか。
その意味ではテーブルはどのような住まいや家庭にも当たり前のように置いてあり、且つ暮らしの必需品であるとも言えます。
テーブルの定義や規格
テーブルを定義すると「平らな天板を脚、支柱または側板で支持し、食事または作業に使う台」となります。
ラテン語の「タブラ(tabula)」がその語源です。
日本では法制上「机及びテーブル」としてその規程に定めがあります。
テーブルは、台の上で作業する、書き物をする、食事をする、物を飾るなど、その由来や使用目的に応じて、様々な形状、高さ、素材で作られています。
すべてのテーブルは平面の天板と1つ以上の支柱または脚の基部で構成され、例えば4本脚テーブルは、四方に支柱となる脚を持っています。
様々なデザイン・素材・機能のテーブルがある一方で、私たちは自宅の間取りや自身の生活習慣と照らし合わせながら、その素材や構造がどのように暮らしに影響するかをじっくりと吟味しながら選ぶ必要があるのです。
日本におけるテーブルは卓袱台(ちゃぶだい)から
日本でいわゆるテーブル「的」な役割を持つものとしてのはじまりは卓袱台(ちゃぶだい)があります。
脚を折りたたみできるスタイルは決して広くはない住宅環境では格納に便利であり、社会情勢や食文化の変化と共に普及していったのでしょう。
一般にテーブルが普及したのは1956年に日本住宅公団が2DKの集合住宅を供給するようになったからだといわれています。
その際に予算の関係で食堂にあたる部屋を作ることが不可能になったため、台所で食事をするスタイルを導入し、「寝食分離」を表現したことが「ダイニングキッチン」のはじまりでもあったようです。
当時は建築家などの間では、布団を敷くたびに埃の出る場所で食事をするのは不衛生であるとし、この「寝食分離」が強く提唱された時期でもあったようです。
茶の間や卓袱台を否定することになったDKは、強引に都市住宅に持ち込まれたものでしたが、コンクリートの公団住宅に住むことが理想とされた当時の世相に相まって普及していきました。
主流の間取りと時代観が生んだコンパクトで画一的なテーブルとその過ごし方
その頃からしばらく、ダイニングテーブルはあくまで「食事を行うためだけの場」でありました。
ダイニングキッチンという場所柄、スペースにも制約があることで、そのサイズも決して大きくはないものが多かったことも要因のひとつでしょう。
また、そこには大量生産による大量消費が是とされた時代観も相まって、その大きくはないテーブルに合うようなこじんまりとしたサイズの椅子を同じデザインで揃えることも主流でした。
決して大きくはない場所に置かれる小さなテーブルと個々の座り心地までは追及できない椅子では食事をとった後は応接室や個々の部屋でそれぞれに過ごすことが多くなるのも致し方なかったのかもしれません。
間取りの変化が生んだテーブルの選び方の変化
時代は流れ、住宅におけるキッチンのスタイルが居室側を向くオープンスタイルへと変化していき、それと同時にダイニングとキッチンは(見切りの方法は多々あれど)間続きの空間となりました。
ダイニングスペースは応接室とも呼ばれていたリビングスペースと一つの空間となり、その間取りはLDKと呼ばれ、ごくごく当たり前の間取りの取り方となっています。
このLDKスタイルでも基本的には「テーブル+椅子」に「ソファ」といった家具が配置されることは変わりませんが、ここで起こったことは「テーブルの大型化」です。
ダイニングとキッチンはこれまでも一つながりの空間であったことは間違いありませんが、そこには広さの関係から来る「ゆとり」はありませんでした。
しかし、リビングスペースと一体化することにより、空間全体に広さが生まれ、そこに限りはあるとしても「テーブルを大きくするか」「ソファを大きくするか」という選択肢を持てるようになったのです。
その結果、ダイニングテーブルを大きめのサイズで選ぶ人はひと頃に比べ、実に多くなりました。
理由は多々考えられます。
情報の増加や流通の多様化により、国内の視点にはないようなデザインに優れたものやヴィンテージ品などの海外製品の購入が以前より容易になったことはその一端です。
私たち日本人よりも体格も大柄で住居のスペースも大きい人たちが使うものは当然サイズも大きくなります。
あるいは、住まいにおける過ごし方の変化は大きいでしょう。
食事だけをする場であったダイニングテーブルは今や、そこで多様な作業を営む暮らしの中心ともなる家具です。
食事はもちろんのこと、個々の作業や来客の対応などもそこで行います。
ずいぶん前から子供のリビング学習の効果がうたわれ、最近では在宅勤務がより一般的になったことなどもテーブルの「万能ツール化」に拍車をかけました。
「大きなテーブル」が求められる背景は
人が過ごすには最低限必要なスペースというものがあり、近くにいる人同士が少なからずストレスを感じるような距離感も存在します。
ダイニングテーブルが万能ツール化するにしたがって、そこで個々が過ごす時間は必然と長くなります。
そして、そこには互いに快適なスペースの確保は必須です。
そのこともテーブルサイズの大型化の一因となっています。
個々が思い思いの行為をしながら快適に過ごせるスペースなら、そこに滞留する時間は長くなります。
テーブルは互いの表情を見ることが容易な位置関係を作り出します。
そのことが気づきや会話、いわゆるコミュニケーションを生み、家族やパートナーとの時間の充実に繋がっていきます。
閉塞感の強い現代は、家族という単位にその活路があり、それを知らず知らずのうちに求める人が増えているのでしょう。
大きなサイズのダイニングテーブルを求める人は快適なスペースと作業性を求める一方で、そのような「絆」を求めているのかもしれず、それは掛け替えのない家族やパートナーとの関係性を高めるうえで非常に重要なことです。
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