「タモ・女神と呼ばれし名樹」
2016.6.19
皆さん、こんにちは。
街を歩いていると、小さなお子さんが道端の紫陽花に「あじさいさん、いつもきれいだねえ」とにこやかにかわいらしく話しかけていました。
小さなお子さんの目線を通すと季節の移り変わりや、ふと見落としがちな事に気づかされることも多いですね。
日本だから味わう事の出来る季節の機微、大事にしたいものです。
さて、好評を頂いている「家具蔵で扱う広葉樹シリーズ」ですが、今回は「タモ」をとりあげます。
家具蔵で扱うタモはナラやニレ、センノキと共に非常に
重要且つ有用な樹木として太古の昔から人々に愛されてきました。
ケヤキやクスノキなどの大木も見る者を圧倒させる威厳さを持っていますが、タモの場合はそれにプラスして品位と優しさを醸し出し、観音像のような包容力すら感じ取れます。
その優美な姿と、材にした際の美しく凛とした木目から「白木の女王」はたまた「女神」と称されます。
そう、タモは様々な理由から神様や王様に例えられる木なのです。
力を加えても折れずに「たわむ」木の性質からその名が付いたように、タモは強さとしなやかさを兼ね備えており、加工性にも優れています。
そのため、家具だけではなく、農耕具などの生活道具、屋根材や楽器、あるいはホッケーのスティックのような運動器具などにも、幅広く使われています。
人の生活には欠かせない木であり、その存在は守り神とも例えることができた、ということです。
また、湿った土壌は場合によって土砂崩れの危険性を孕んでいますが、タモはそうした場所の地下奥深くに幅広い根を張り、斜面の土砂崩れを防いでくれています。
タモはナラやブナなどのように群生はせず、川などに沿った位置に配列して生長しているので、一層そうした災害を防いでいると言えるでしょう。
つまり人々の生活を陽となり影となり、守る。
それを昔の人は母性に例えたのかもしれません。
実は仲間の木であるトネリコやアッシュにも同じ属性があります。
総じて神様が宿る、あるいはそのものという人々の感謝の念や畏敬の念も共通であることをみると興味深いものがありますね。
人が生き抜く為に、気の遠くなるような長い年月をかけて得た知恵と工夫を結集して、それぞれの木の活用を見出したこと。
それはまさしく適材適所であり、すべての木に言えることです。
そして、その木に守られていることを知り、それが長く続くように畏敬の念を持って接すること。
タモという名樹を通して、古代の人々と自然が教えてくれることはこういった大事なことなのかもしれませんね。
いかがでしたか?
素材の見た目や空間での映え方といった部分も重要ですが、こういったあまり語られない面について知ると、その素材にもっと愛着が湧いてきます。
各スタッフが今日もとっておきのエピソードをご用意してお待ちしています!
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