鉋(かんな)の種類を知る
2020.7.10
家具蔵の無垢材家具は熟練した職人の手作業により生み出されていきます。
彼ら職人たちは木の材質や形状に合わせて、いくつもの道具を自在に使いこなします。
例えば、鉋(かんな)掛けひとつにしても、削る場所や木材に合わせて大小数種類のものを駆使し、それぞれの道具は家具によっても使い分けられます。
その種類は全部で50余りにのぼります。
こんなに多くの数の工具を使うのは、機械では決して出すことのできない滑らかなラインや木が本来持っている美しさを引き出すためです。
今回は家具蔵の無垢材家具を語るうえでは欠かすことのできない「鉋」のお話をご紹介します。
鉋とは
鉋(かんな)とは、木材を削る木工用の工具用品です。
木材の表面を薄く削るための切削工具で、鉋台、鉋刃(鉋身)、刃を固定するための裏金から構成されています。
荒れている木材の表面を平滑に仕上げたいとき、木材の厚みを調整したいとき、角を落としたいときなどに活躍します。
少し特殊な用途としては、反った板材を修正したり、汚れた白木の板をきれいに再生したりするのに使うことも。
木材の表面を滑らかにする方法としては、サンダーやサンドペーパーを使って研磨する方法もありますが、カンナで削ると水滴を弾くほど緻密でツルツルとした面に仕上げることができます。
鉋の歴史
鉋は世界中で古くから使われてきました。
西暦79年ローマの時代に現在のイタリアにあった古代都市ポンペイから出土したものが、確認されている中では最古の鉋といわれています。
日本でも、今日に残る伝統的な建築物や優れた木工技術を支えてきました。
弥生時代に使用していたヤリ鉋と呼ばれるものが国内最古の鉋として出土されています。
その後、時代が進んで室町時代に中国から現在まで続く台鉋が伝来しました。
現在の日本式鉋は引くタイプのものですが、当時ヨーロッパから中国まで押して削る鉋が一般的であり、日本の鉋もこの押して削るタイプのものが使用されていました。
安土桃山時代に描かれた絵図でも、この台鉋を使っている様子が確認されており、本格的に引いて削る鉋がメインとなったのは、江戸時代中期といわれています。
それから長い間活躍している台鉋ですが、現代の建築現場では電動式の鉋へと主流が移り変わってきています。
鉋の種類
鉋には、今でもヨーロッパなどで用いられている押す形のものだけでなく、その用途に合わせて、より最適な加工ができるようにさまざまな種類があります。
鉋(カンナ)は大きく分けて「平鉋」「面鉋」「さくり鉋」に分けられます。
一番多用される平鉋には豆鉋、小鉋、長台鉋、台直し鉋などがあります。
面鉋、さくり鉋は細工物など特殊な加工に使われることが多いものです。
面鉋には内丸鉋、外丸鉋、反り台鉋があり、さくり鉋には際鉋、脇鉋、機械さくり鉋などがあります。
平鉋
平鉋は木材の広範囲を平らに削る、「鉋」です。
板や角材などの表面を平滑に削るために適した鉋で、一枚刃と、二枚刃とがあります。
鉋は元来、全て一枚刃でありましたが明治時代以降に、逆目を防ぐための押え刃をいれた二枚鉋(合せ鉋)が考案されました。
現在では一枚鉋は、削艶をだす高級な仕上げの時などに使用されています。
平鉋は材を荒削りするための荒仕工鉋、さらに平滑な面にするための中仕工鉋、最後の仕上げをするための仕上鉋(上仕工鉋)に分類できます。
荒仕工鉋にするには、鉋刃の出をやや多くでるように調整して、刃口も広くして厚い削屑がでるようにします。
中仕工鉋、仕上鉋の順に、刃先の出を少なく、刃口も狭くなり台の下端もそれぞれに応じた調整をして使用します。
平鉋のうち、刃幅が3寸以上のものを大鉋と呼び、1寸8分以下で台も短いものを小鉋、8分以下で台も極めて小さいものを豆鉋と呼ばれています。
面鉋
面鉋は曲面用で、内丸型は主に面取り用、外丸は円筒の内面や隅のアールを削ります。
特殊なものでは、複雑な形状の刃を持った「飾り面取り」用もあります。
さくり(作里・しゃくり)鉋
さくり鉋は「しゃくり鉋」とも呼ばれ、平鉋や最適鉋が木材全体をまんべんなく削るのに対し「特定の個所をちょっと削りたい」ときに使用する鉋です。
溝や側壁、隅などといった「通常の鉋では削りにくい/削ってもムラが生じてしまう」箇所で使用され、他の鉋と比べると限定的な使い方をする鉋になります。
電気鉋
ドラムについた刃を電動で回転させて材料を削ります。
扱いが難しく、使いこなすために経験が求められる手道具の鉋と違い、初心者でも比較的簡単に鉋がけを行えます。
繊細な作業には向きませんが、天板など広い面の鉋がけを、効率よく行うことができます。
鉋は、砥ぎに5年、使うに3年掛かるといわれています。
また、木の種類、状態、箇所、工程によっても使用する鉋は変わり、自身で作ったり調整したりしています。
その為、鉋を使いこなす為には非常に多くの経験と日々の研究が必要だといわれております。
そんな熟練した職人の手作業により削り出された家具はまさに芸術品と言えるのです。
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