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無垢材一枚板天板でダイニングテーブルを誂えるということ

2019.4.11

 

家具のアイテムの中での「ダイニングテーブル」というものを考えた場合、現在の日本人、日本の住まいと家族の関係、暮らしのスタイルを読み解いていくと「単に食事をする場所=食卓」ではなく、もう少し多目的な場所、そしてその場所を象徴する家具としての位置づけが見えてきます。

日本の食卓にテーブルと椅子が広く一般的になる前は、日本人は座卓や卓袱台(ちゃぶだい)を囲んで食事をしていた時代が続いていました。

特に卓袱台についての考察は、日本人の住まいや空間の捉え方に関する興味深い再考になり、後述する現在の日本人の食事と寛ぎのスタイルに繋がる部分もありそうです。

卓袱台についての定義をみると

「日本で用いられる四本脚の食事用座卓。一般的に長方形あるいは円形をしており、折り畳みができるものが多い」

とあります。

古くは民家の田の字プランと言われ、後に公営51C型として広く世の中に広まっていくことになる日本の集合住宅の初期の間取りは、和室の一部屋を居間、食堂、寝室、として多目的に利用するものでした。

そこにはソファーやダイニングテーブルのような、決まった形の大型の家具ではなく、布団、座布団、卓袱台、のような可変させ移動して使える家具がありました。

それでも51C型にはすでに「ダイニングキッチン」の発想と実現があり、洋風と和風のせめぎ合いがみられるのも興味深い現象です。

そのような生活スタイルの洋風化に伴い、だんだんと日本人の生活の一部となったダイニングテーブルと椅子ですが、それは言い換えると空間の性格を決めることでもありました。

それまでの和室でなんでもするスタイルから、ダイニングは食事の間、リビングは寛ぎの間、などというように、西洋の部屋名をそのままなぞって取り入れた為に、応接間などのあまり使われない部屋が生まれたことも事実です。

ここで重要なことは、日本人の暮らしに導入されたダイニングテーブルが、その導入時に深い考察もなく形式、スタイルの模倣であったということです。

それから現在まで続く日本の食卓風景、ダイニングテーブル選びには、模倣であったことの僅かな歪みが蓄積されながら、独自の進化を遂げました。

その歪みについて解説しながら、ダイニングテーブルの素材、無垢材の一枚板でダイニングテーブルを誂えるということについて、改めて考えてみたいと思います。

 

テーブルの素材はどんなものが良いのか


卓袱台はケヤキやサクラの無垢材で作られる事が多かったこともあり、初期のダイニングテーブルも同じような素材で作られていたのかというと必ずしもそうではありませんでした。

デコラ貼りとも言われる白っぽいメラミン化粧版、突板(つきいた)などを表面に貼り付け、内部は合板(ごうはん)のテーブルも数多く製作され販売されていたのです。

(突板とは原木を0.2mm~0.6mmほどまで薄くスライスしたものです。

また、合板とはベニヤ(木材から薄く剥かれた「単板」のこと)を何枚か積層して接着したものになります)

また天然木なので、同じ木から採られた突板でも1枚1枚微妙に表情が異なります。

突板は海外のアンティーク家具にもよく使われ、長い間親しまれてきました。

それは、建築分野のいわゆる「新建材」と同じように、家具の分野でも、新しく便利で一見美しくみえる素材として持て囃されたという部分もあったのかもしれません。

新建材とは建築の外装や内装に使用され、特に外装材については、雨風、日光に曝されることもあり、その劣化具合も激しく、使用され始めこそ良いものとされましたが弱点が指摘される事も多くなります。

そして時代が進み、素材分野の技術革新が進むと、デコラ貼りのテーブルは殆ど見かけなくなりましたが、替わって、シートに木目を印刷し、木の質感を表現するような凹凸加工(エンボス加工)の製品が多くなりました。

一方、合板の表面に突板を貼りつけたテーブルも、より素材感を表現できるような製法が工夫されてきて、現在では上記の2タイプを合わせると、世の中に出回るダイニングテーブルの殆どの割合を占めると考えられます。

ここ数年、ダイニングテーブルとして、木という素材、中でも無垢材への需要が高まりを見せていると言われます。

バブル時代に象徴される、大理石やガラスのデザイナー家具、デコラティブなスタイルをひと通り経験し通り過ぎてきた日本人の中で、素材として最もインテリアに馴染み易く、手触りも優しい木への回帰があるのかも知れません。

そして食の分野でも、素材そのものへの関心が深まり、様々な情報が表面化されたことで、食への安心、こだわりが一般の人にも認知されたように、テーブルの素材としての木についても、樹脂シートに木目がプリントされたものや、接着剤で固めた合板の表面に突板を貼ったものをはじめとした、経年で状態がいわゆる「劣化」するものよりも、本物の素材(無垢材)をつかい、大切に使い込んで味わいを増していけるようなものを選べることが認知され、その選択肢が広がりました。

 

一枚板の魅力とは


無垢材のダイニングテーブルの中でも、少し特別な響きを持つジャンルがあります。

それが「一枚板」です。

一枚板とは、先述の合板でも集成材(とても細かい無垢材の集合体)でもなく、また無垢材では「ハギ板」とよばれる合わせ目もない、文字通りひとつのパーツで構成される天板のことを言います。

ダイニングテーブルとして必要となる奥行が80センチから90センチ程度とすると、それを確保する為には木の直径では100センチ以上の巨木が必要となり、かつその巨木の内部が空洞になっていたりせず、製材して乾燥させている途中にひび割れや腐りが入ることのなかったほんの一部分を使用しなければならないため、簡単に供給できるものではありません。

それでも巨木になるだけの生命力を持ち、厳しい自然環境にも耐えた樹の存在感と迫力のある木目や樹形の美しさは、言葉では表現できない理屈抜きの魅力をもって多くの人を惹きつけます。

 

ダイニングテーブルに求められるもの


ここで卓袱台とテーブルの話に戻りますが、日本人が西洋のテーブルスタイルを導入した時に忘れてしまったものは、日本人ならではの寛ぎ、もてなしのスタイルだったのではないかと考えられます。

それは本来、卓袱台(座卓)で行われていたものであり、象徴的なのは漫画「サザエさん」の団欒風景と、現在でも残る和室=客間(の座卓)という空間です。

日本人は本来アメリカのホームドラマのように大振りなソファソファセットに家族で揃って団欒するよりも、食卓を囲んだ団欒に馴染みが深い民族です。

食事が終わった後もその場所でお茶をのみ、新聞を広げ、今日の一日の出来事をポツポツと話し、片隅では子供たちが宿題をしたり読書をして過ごす「多目的な作業台」、それこそが日本人に合ったテーブルでした。

ダイニングという名前がついていてもそこで行われている実態は、古くから卓袱台で行われている行為そのものだと考えられます。

 

だから無垢材一枚板でダイニングテーブルをつくる


古くは卓袱台であった家族の自然と集まる場所が現在のダイニングテーブルだとすると、その場所に大樹から造られた一枚板テーブルが在る事は、必然のような気がします。

住宅のつくりが構造材を表面に見せない大壁(おおかべ)造りとなり、マンションなどの集合住宅も増え、住まいの中から「大黒柱」が消えて久しいですが、人間の性(さが)としてどこか、拠り所となる場所を求める気持ちがあるとすれば、大きな木をそのまま使い、精緻な家具職人の技術と見立てによって生活の道具に昇華させた一枚板テーブルは、それを満たしてくれる格好の存在です。

家族の歴史を刻み世代を超えて使い続けていける無垢材家具の中でも、毎日の食事と団欒の中心となるテーブルを一枚板で誂える、これほど私たち日本人の性質に沿い、満足感を得ることの出来る家具選びは無いかも知れません。

家具蔵の「一枚板ギャラリー」では、一枚板以外にも約30種300枚に及ぶ樹形を活かした無垢材の耳付き天板を展示し、実際に触れながら選ぶ事ができます。

世界に一枚だけの個性溢れる天板を是非見にいらしてください。

 

家具蔵の取り扱う無垢材一枚板のラインナップはこちらから

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