オーク（楢・ナラ）に伝わる言い伝えと人との関わり

世界でのオークの言い伝え

ケルト民族は紀元前にオーストリア、ドイツ、スイスなどのアルプス地方からヨーロッパ全土に広がっていた先住民族を指します。

その文明や世界観は近年また注目され、映画「ロード・オブ・ザ・リング」はケルトの神話や世界観がベースとして描かれていたことは有名です。

そんなケルトの暦では、6月10日から7月7日（17日という説もあります）まではオーク（ナラ）の月です。　

オークは、ケルトの間でも最も神聖とされていた樹で、ゲール語では『Duir』と書き、意味は『木そのもの』、『誠実』などです。

ケルトの人々にとっては、オーク（楢）は樹の象徴だったのです。

オーク（楢）はヨーロッパの他の国々でも重要な樹と捉えられ、数多くの神話にも登場していました。

また、『オークほど世界各地で崇められている木はない』と書かれている本もあるくらいです。　

例えば、古代ギリシャの言い伝えによると世界で最初に生えたのはオークの樹で、人間はそこから生まれたことになっています。

北海道のアイヌ民族でも、オーク（楢）の樹はドングリを与えてくれる「良い樹」とされていたようで、たくさんの樹々の中でも位の高い樹でした。

さらに、カリフォルニア州一帯のネイティブ・アメリカン達もオークの樹を『世界の木』として敬い、その実はあらゆる生命が生まれる『宇宙の卵』を象徴しているとみていたようです。

神聖視されるオーク

また、オークがこれほどに神聖視される理由のひとつで『雷が落ちやすい』という性質があったようです。

これは、オークの樹が水脈の走る地下深くまで根を伸ばすことが原因といわれています。

いわゆる「深根性」の代表的な樹木がオークです。

夏になり、雷の発生が増えてくるこの時期はちょうどオークの花の開花時期とも重なります。

古代の人々は、オークの花が稲妻を呼び寄せると考えていたとか。

そこからこの月が「オーク月」となった、というのは頷けます。

圧倒的な破壊力を持つ雷や稲妻は「天からの火・宇宙からの火」としてとらえられます。

世界各地の神話では、雷を司る神を主神にしている場合が多いようです。

例えば、ギリシャ神話のゼウスは全宇宙を破壊するほどの強力な稲妻が武器とされています。

ローマ神話のユピテルも、天空の神が転じて気象全般、特に雷を司る神とされています。

それぞれの神の聖なる木はオークだと言われています。

古代アイルランドの神々の父、ダーナ神族の最高神ダグダに捧げられた樹もオーク（楢）でした。

オーク（楢）の樹は、木自体も材木としてとても有用で家具を作れば、木目の美しさや肌触りの良さ、高耐久性、磨けば磨く程に輝きますし、沢山実るドングリは、人間はもちろん動物たちの食べ物として恩恵を与えてくれています。

ダグダと言えば『魔法の大釜』の持ち主で、その大釜からは食べ物が尽きることなく溢れ全てのものに分け隔てなく食料を与えてくれると言われています。

でも、臆病者と嘘つきには、この大釜の中身が空っぽにしか見えないんだとか。

古代ケルトの人々は毎年秋になると、沢山のドングリを人にも動物にも分け隔てなく与えてくれるオーク（楢）の姿をダグダ（と大釜）に重ね合わせたのかもしれません。

オークが私たちに与えるもの

オークの樹の意味には、『忍耐』や『着実な成長』『最後までやり抜く力』『不屈の精神』といった意味があります。

太くどっしりと聳え立つオークは、イギリスでは「森の王」とされ、現在においても、威厳と勇気のシンボルです。

神聖な樹として崇められたオークはドルイド賢者たちの杖として、魔術な用途として使われていました。

この「ドルイド（druid）」という言葉も、ケルト語で「dru（オーク）」と「wid（知る）」からなり、ドルイドとオークの強い関係性をうかがうことができます。

現在においても、耐久性に強く、磨けば磨くほど美しく輝くオークの無垢材は、世界各国おいて最高の木材と評され、多くの人に親しまれています。

また、長寿樹として知られているオークは、ドングリをたわわに実らせます。

多くの鳥や昆虫、動植物たちを繁栄させる、「包容力のある偉大なる長老」のような樹なのです。

そして、太陽のパワーが最大になる夏至がある「オーク月」は、ケルトの間では実りの時期へ向けてのパワーが最大になる時期です。

オークが我々に投げかけるメッセージの中には、依存心を振り払い、自分の手で運命をつかみ取るのだ！！と言っているかのようです。

どんな手段だったとしてもその経験は決して無駄にはならないと、オーク（楢）はいつも励ましてくれています。

家具蔵で扱うナラの詳しい情報はこちら

ナラ材の家具の事例を集めたページはこちらから