木材という名の身近な自然

木材という名の身近な自然

日本人の暮らしと木とのかかわり

日本人の暮らしと木とのかかわり

木のかたわらに人という字を添えて、「休」と書きます。このような漢字の成り 立ちにも表現されているように、暮らしの中に木の恵みを取り入れることで、人は想像以上の安らぎを感じることができます。
森林が国土の約3分の2を占める日本では、古来、木は人に身近な存在であり、先人たちは木からさまざまな恩恵を授かってきました。例えば、日本を代表する銘木・ケヤキは、その語源を「けやけき(際立った)木」とする説があるように、神社や仏閣の建築材、住宅の建具や床柱などに使われる「特別な木」として珍重されてきました。また、ナラやタモなどの堅くて粘り強い材質の広葉樹は、日常的に酷使される身の回りの道具などに利用されてきました。

器

さまざまな工業材料が誕生し、素材選びの選択肢が格段に増えた現代においても、木は私たちの暮らしの中のあらゆる場面で使われ続けています。特に近年は、健康への配慮から、住宅建築における自然素材の需要が高まっており、構造材はもちろん、床や壁などの内装材、建具、窓枠までにも(堅くて傷が付きにくい広葉樹を中心にした)無垢材が好んで使われています。
このように木と日本人とのかかわりの歴史を振り返ってみると、もの作りの材料として木のほかに適当な資源がなかったという物理的な事実もさることながら、それ以上に木という素材に対する並々ならぬ思い入れまでも感じることができます。実際、日本人ほど木を愛好する民族は、世界中のどこにもいないでしょう。
昔も今も、私たちの潜在意識の中には木を慕い、そこに身を委ねたいという思いが変わることなく生き続けています。「木の文化」を心の拠り所としてきた、日本人の暮らし。どんなに時代が変わっても、私たちの心の中から木への愛着や信頼感を消し去ることはできないのです。

木質系材料と無垢の木材

木質系材料と無垢の木材

かつて、無垢の木材が「時代遅れの素材」と思われていた頃、木を新しい技術で加工し、工業材料のレベルに近付けることが「進歩」とされていました。その結果、エンジニアリングウッドと称する木質系材料が続々と誕生。狂う、腐る、傷が付く…といった従来の木材の弱点を補い、大量供給に応じることのできる新建材として、大いに役立てられてきました。しかし一方で、このような木質系材料の登場により、あらためて無垢の木材の素晴らしさが見直されるようになったのは、当然のことかもしれません。

板

木を構成する細胞の一つひとつは、寒い土地では寒さに耐えるように、雨の多い土地では湿気に強いように、微妙な仕組みに作られています。それは、人間の知恵など到底及ばない、生命の神秘と言えるものでしょう。近年、昔ながらの木の住まいが人気を集めているのは、木の細胞に備わったそれらの特性が、快適な住み心地をもたらしてくれるということに、多くの人が気付きはじめたから。そして、同じく生き物である木で構成された空間は、私たちに深い安らぎを与えてくれるはずです。木質系材料と無垢の木材、その違いを、私たちは生き物としての根源的な感覚で知っているのです。

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