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インテリア・デザインと人間工学

2017.9.30

数回にわたってこのコラムでもご紹介している人間工学。

今回はインテリア・デザインとの関連性についてです。

現代日本の建築や家具デザインはそのクオリティにおいて、世界でも指折りのレベルにあるといわれています。

高層ビルや駅舎、そして数々の名作椅子などは身近な一例です。

今回はデザインのなかでも住まいや建築とも切っても切れない関係性がある「インテリア・デザイン」と人間工学の関係性についてお話していきます。

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インテリア・デザインの専門性

インテリア・デザインというと、家具・内装などと室内装飾と捉えられていますが、最近では室内の意匠や室内計画なども広義して含まれます。

そのインテリア・デザインに関しての議論が日本では少なすぎたという指摘が、だいぶ前から活発になっていました。

いわゆる「インテリア・デザイン」は大義として建築に付随するもので、その専門分野である建築学においては、環境工学や設計計画という既に独立した学問の体系が存在します。

そこでは人間が社会生活を営む基本の単位である住居についての考察と幅広い知識は欠かせない要素です。

そんな専門分野の人ならば、いわゆる「室内」のこと、ひいてはインテリア・デザインのことも当然ながら細かな理論を持っているはず…。

そんな風に思っても不思議はありません。

それが一概にそうとも言えないのです。

建築家という職業とインテリアコーディネーターという仕事はある意味別物であり、違った専門的な知識を求められるのはその一例でしょう。

 

例え話しをひとつ。

農作物の出来は天候に支配されます。

つまり、農業と気象とは切っても切れない関係にあることはすぐに理解できるでしょう。

しかし、だからといって気象学によって農作物の栽培をコントロールできるわけではありません。

気象学は地面から離れた上空のもっと大きな天候を対象とした学問だからです。

地面に近いところで生育する農作物の栽培については「微細気象学」という、農業に特化した学問が別に独立して存在します。

勿論、実際に農業に従事する人たちも。

つまりそれぞれの専門家が細かなノウハウや体系的な知識を複合的に駆使しながら、「農作物」というひとつの答えをつくるわけです。

建築における「室内」の設計やデザインもさらにきめの細かいミクロの環境工学や計画学が必要になってきます。

それがないと、快適な住まいの空間になりません。

そこでこの間を埋めるもののひとつとして、人間工学がとりあげられるようになりました。

「建築が洋服だとすれば、室内は下着にあたる」という人もいます。

 

人間の肌に直に触れながら、洋服との間に存在し、服飾の機能と平時の快適性を十分に発揮させる下着。

実は下着は洋服よりも、もっときめ細かい設計の技術を要することとなります。

これも大儀的に人間工学の分野に基づいたものです。

下着専門店や専門のデザイナーが存在するのは当然の成り行きと言えるでしょう。

そのようなことからもインテリア・デザインと人間工学の関係性は”室内下着論”と呼ばれたりもしています。

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日本の住様式の変化とインテリア・デザインの考え方

日本は欧米と比較してインテリア・デザインの分野に遅れをとっている、と言われます。

それは本格的な住様式の変化から数十年程しか経過していないからだ、という声もあります。

日本の伝統の住様式は、いわゆるノーファニチャー(家具を使わない)の形式でした。

数寄屋風(茶室を取り入れた住宅の様式)というひとつの完成された空間であって、その中にせいぜい座布団とたんすを持ちこめば、生活ができたのです。

そして、戦後に住様式が変わるなかで部屋の真ん中にテーブルとチェア(つまり家具を使う生活)が入る生活が一般的になり、欧米とは遅れて後発的にインテリア・デザインが日本でも進歩してきた経緯があります。

 

その日本におけるインテリア・デザインの進歩のなかで、主に注目されたのは家具でした。

しかし、それは「団らんとおもてなしの為」「スタイルを優先する為」という限定的な役割であったが故に、「休息の為」「生活を快適にする為」という、家具に最も大事な要素は社会の変遷のなかで半ば無視されてしまったことは否めません。

いわば外見的なデザインの華やかさばかりを重視し、使い勝手や耐久性といった部分は軽んじられる傾向にあったわけです。

これが多様なデザインや考え方の流入や違う角度からの視点を持つ人々の尽力で「機能面」の重要性が認められてきてからは、研究も進められ、そこに論理的で科学的な方法を持ちこむ手法も発展してきました。

そのような経緯を経て、日本のインテリア・デザインにも「人間工学」という分野が発展してきたのです。

いわば美術と科学との共演。

快適性と美しさを追求することは、こうした多方面による専門知識の結晶の賜物なのです。

美しく、使いやすく、心地良く。

それを体現する私たち家具蔵の家具を、こうした観点からお話しするのもまた興味深いものがあるかもしれませんね。

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参考文献:

実教出版株式会社 小原二朗著書「暮らしの中の人間工学」

講談社 小原二朗著書「人間工学からの発想-クオリティ・ライフの探究」

 

 

 

 

 

 

 

 


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