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人間工学と家具  -その2-

2017.11.5

以前、当コラムでご紹介した『人間工学と家具』(http://kagura.sakura.ne.jp/kagura/old_img/column/other/171023100012.html)の続きとなります。

今回は家具蔵の店舗でもお話をする機会が多い、「椅子」について人間工学と関連づけてお伝えしていきましょう。

 

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椅子が先か、台が先か

毎日の食事や諸々の作業が、椅子の用途の中では一番多いのではないでしょうか。

通常、目の前にテーブルや机など、いわゆる「台」があるのが必然となってきます。

従来はこれをセットで捉え、まずは机を基準に置きながら椅子と人間のことを考え設計してきた歴史があり、一般の方もこうした考えを持っている方が多いのですが、これが根本的に間違っていたことがこれまでの人間工学の研究から明らかになってきました。

 

机を設計する際には、まず人体があり、それに合う椅子を考えた「後に」人体と椅子に適合した机を設計するという順序で進めていかなければならないのです。

使用するのは我々人間なのですから、それを基準に考えなければならない、ということです。

この場合の椅子の高さというのは、座面の前部の高さのことでもなければ後部の高さのことでもなく、「坐骨結節の高さ」が本当の椅子の高さとなります。

そして適正な坐骨結節の高さとは椅子に深く座って、無理なく足の裏が床面に着く状態。

適正な机の高さは、「適正な坐骨結節の高さの点(坐骨結節点)から上に向かって垂直に机の上面まで測った距離」(これを差尺といいます)を指すのです。

 

このような考え方がはっきりしておらず、椅子は椅子、台は台と分離した考えが一般的だった時代は事務用机でも学校用机でも、高すぎたり低すぎたりするものが多く、それは一般の家庭で使われる椅子やテーブルの関係性でも同じことがいえます。

このような考え方が確立されていなかった理由として、以前にご紹介した「ノーファニチャー」である日本の生活様式に要因があります。

和風の住宅では足のかかとも坐骨結節点も、共に畳の上にあるため、あえてそれを区別して考える必要はなかったからです。

しかし、洋風の椅子式生活では、そこをおろそかにすると日々の生活で必要なことに不便が生じてしまいます。

室内での生活を機能的に考える。

このことは、椅子を人間工学的に理解するうえで、第一のポイントになってきます。

 

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場面(シーン)によって異なる「良い椅子」の定義

椅子は「腰かけること」が前提であり、そのことが一番重要です。

その「腰掛ける」ことは「身体を休める」「楽な姿勢をとる」という意味とほぼ同じであるといって良いでしょう。

しかし、その行為は場面(シーン)が変わると意味合いを変えてきます。

回転率を求める飲食店の椅子が座りやすいとお客の入替えが悪くなるので営業上好ましくない、会議室の椅子は退屈な会議を長引かせないように座りにくくする…、こうしたシーンごとの工夫が椅子には成されます。

そしてこれには「居心地の良さ」はあまり求められていません。

一方で、家庭で使う椅子や職場で使う椅子には居心地の良さや機能性を求めたいものです。

また、寛ぎたいのか、出入りを良くしたいのかといった「どう過ごすか」といった要素も含まれてきます。

 

椅子はいわゆる飾り物と同じように、見せかけだけで良し悪しが語られる場合も少なくありません。

デザイン面のみが先行し(アート的な側面でいえば素晴らしいのですが)、実際は座りづらい・使いづらい椅子も多く存在します。

例えば、テレビを買うときは音や画面が鮮明なことや、録画機能などの使い易さなどが購入の条件であり、テレビそのもののデザインを重視して他は度外視する人はあまり多くないでしょう(例外もありますが)。

椅子を選ぶ際に、外観や表面的なスタイルだけに頼るような選び方をしていることは、映像の映りが悪いテレビや、音が悪いステレオを買うのと同じことになってしまうわけです。

とはいえ、椅子はインテリアの一部である以上、形や色に重点が置かれるのは自然であり、ながめて美しいものがよいのは当然です。

特に室内の雰囲気に重きを置く際であればなおさらです。

そうであれば、次の2点がやはり重要でしょう。

それは椅子には目的やシーンに応じた「腰掛ける」ことを満たす機能性と、デザイン的な美しさの2つの要素が必要な条件だということです。

つまり、目的がはっきりしていれば回転率を求める飲食店のような椅子もそれは立派なデザインなのです。

 

家具蔵でご案内するチェアはすべて、「その場所で長く過ごして頂くために」「長く座っていても疲れないものを」「長持ちするつくりと素材だからこそ飽きのこないデザインを」というポリシーでつくられています。

これも上記の2つの要素を満たした、人間工学的な観点も含めた家具蔵の椅子への回答です。

今日もまた、一脚一脚が熟練の職人たちの手仕事によって、機能性とデザイン性が両立した椅子達が生まれていきます。

 

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参考文献:

実教出版株式会社 小原二朗著書「暮らしの中の人間工学」

講談社 小原二朗著書「人間工学からの発想-クオリティ・ライフの探究」

 

関連リンク

http://www.kagura.co.jp/kagu/concept/1.html

 

 

 

 

 

 

 

 


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